第8話 凱旋王女

 ミリアの鋭い目線の先には、一匹の小鬼が居る。


 手にはどこかで拾ったであろう剣を握り、通行止めだとミリア達に振り回す。


「またこんなところに小鬼です?」


 行きと同じような所に出てきた小鬼に向けるミリアの目は冷たい。


「私の邪魔をするなです!」


 剣を振り回し突っ込んできた小鬼に突撃する王女は、衝突の瞬間に剣を掻い潜って軽く闘気を込めたジャブを小鬼に当てる。


 その見た目は軽い一撃は小鬼をぶっ飛ばして、ぶつかった小山に砂煙が上がる。


「剣を回収しないからだよ?」

「そうだったのです?」


 剣を拾って布を巻きながら背嚢に突っ込む勇者。


 拳の一撃で穴を掘って、小鬼を片づけていたミリアは驚いてアリアに聞き返す。


「どこからか見ていて、掘り返したんだろうね」

「悪い奴には破ァです!」


 王子が締めくくるとミリアは八つ当たりに強めの震脚で埋めて、街道の帰り道を三人は行く。




 町の門に着いた白いドレスの王女は門兵に確認の声をかけられる。


「ミリア様、街道は無事ですか?」


「善処したです」


 ミリアは門兵に手を上げて返す。


「勇者様と王子様だ!」

「友達を連れて帰ってきたみたいだね。」


 ドレス姿の王女様が王子と勇者を引き連れて、昼の賑やかな城下町を通り過ぎるが町の人は行きと同様に気にしない。


「おかえりなさい、ミリア様」


 ゆっくりと城の門を通り過ぎる三人に警備の兵は、何時もの事だと気にしないで陽気に挨拶する。


 王子様を救出したことを伝える為にミリアは速足で廊下を歩く、急いでいても廊下で走らないのはお母様との約束だ。


「王が謁見の間でお待ちです」


 そんなミリアに声を掛けるのは城の騎士の一人で、どうやら話が通っているらしく王様は謁見の間で待っているみたいだ。


 ミリアは素直に謁見の間へ速足で廊下を歩き始めて、謁見の間の警備の兵に扉を開けてもらい、段差の上にある玉座で待つ王へ進んでいく。


 王の前で勇者と王子は膝を突くが、ミリアは立ったまま話し始める。 


「王子を救出したです」

「うむ、二人も面を上げよ」


 ミリアの報告に泰然と返すと、他の二人にも顔を上げる様に伝える。


「救援感謝致します」

「うむ」


 顔を上げた隣国の王子の感謝の言葉に頷き王は口の端を上げて続ける。


「勇者アリアよ、救出ご苦労であった。 泊っていくと良い」

「感謝します」


 顔を上げた勇者には城に泊まっていくことを勧める。

 ミリアの喜ぶ点を抑えているのだ。


「放棄した城が四天王に使われて、無くなったです」

「うむ、仕方あるまい」


 娘の被害報告にも泰然として返す。


「跡地がボロボロすぎて片づけられなかったです」

「人手を出そう」


 ミリアが無理だというならと、かなり多くの人を出そうと髭の生えた顎を指でこする王。


「此処までとしよう。 三人共、疲れているところご苦労であった」

 

 急なことで、騎士くらいしかいない謁見は素早く終了された。




 城の中のミリアの私室にアリアは来ていた。


「王子は狙われてるみたいだけど、これからどうするミリア? 」

「アリア、もちろん魔王軍をぶっ飛ばすです! 」


 フンスと鼻息荒く返すミリアにアリアが問題点を指摘する。


「いつも王子と一緒にいる訳にもいかないから、また攫われるよ? 」

「そうなったら、またぶっ飛ばして連れ帰るまでです! 」

 

 単純すぎる王女の解決策に頭に手を当てる勇者。


「大丈夫なのかな?」




 ――あとがき――


 王子を救い出してハッピーエンド?

 

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