次元の放浪者
モ゙
プロローグ
ふらっと旅に出たくなったことはないだろうか。俺はあった。五歳のころに俺は一度
家から二キロぐらい離れたところに行った。今思えばあれは旅と呼べるものではなかっただろう。しかし、五歳の俺にとってはとてつもなく長い道のりだった。あれが俺の初めての旅だったと思う。それ以来俺はふらっとどこかに行ってはまたふらっと帰ってくることが多くなった。最初のころは親も心配していたが、続くうちにどうせ家にはちゃんと帰ってくるでしょという雰囲気になった。
八歳のころに自転車を買ってもらった俺はさっそく自転車に乗って十キロ離れた海まで行った。楽しかった。帰り道が分からなくなったので地図を見ながら帰った。
中一になるころには三十キロ離れたおばさんの家まで行き止まって帰ってくることもあった。
しかし十三歳になるころ俺はとある国のインターナショナルスクールに入れられた。
親が言うにはこれからは英語が大事だということだった。それから六年間俺は旅に出ることをやめてしまった。
日本に帰ってきた後、それなりにいい成績をとれたため俺は海外の大学に進学し、卒業後は日本でもトップといわれる会社に入社した。
二十八歳で結婚もした。三十五歳になって妻が子供を産んだ。
そして四十過ぎたころ俺はまた旅に出てみたくなる感覚に襲われた。しかしすでに子供もいるため旅には出れなかった。
しかし一年もするとどうしても旅に出たくなり、妻と子供が妻の実家に帰省している最中、俺は有休をとって三日間で東京から静岡まで自転車で行くことにした。予定よりも早く行けたためさらに遠くまで行けた。
その後、俺は休みなどを使ってちょくちょく旅に行っていた。六十を過ぎるころには子供も成人したので妻と一緒に山に登りに行ったりした。しかし年に何回旅をしても、俺の旅欲は満たされなかった。
そして八十七歳の誕生日に俺は死んだ。原因は老衰。八十七になるまで何度も旅をしたが結局満足はできなかった。
次元の放浪者 モ゙ @koutarou0401
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