第14話 孤高




(あ~~~やっぱり、いやだ~~~)


 汐黎は狼姿の自分にイライラしていた。

 何がイライラするって。

 四足歩行、口から直接食べ物を摂取、おトイレ問題、視界の低さ、嗅覚の鋭さなどなど動物特有の性質に加えて。

 このもふもふの毛。

 狼なのだ。

 シュッと顔も体格もスリムで凛々しくて孤高の存在でカッコいいのだ。

 短く真っすぐで艶やかな毛であるべきなのだ。

 耳はまさに理想そのものなのに。


 それがどうしてこんなにもふもふなのだ。

 カッコよさが半減どころか、九割減だ。

 時々小鳥たちが巣だと判断して暮らしている始末。

 恐れられる存在なのに。

 近寄り難い孤高の存在であるべきなのに。

 まさかの、のほほんあったかい住宅扱い。


(早く恋文の中身を読んでこの姿とおさらばせねば)


 汐黎は闘志を燃やしながらも、決してその熱を表に出さず、冷静な態度を取ろうとしていたのであった。


(侍は感情を表に出さず冷静に。けれど、心の内は闘志を燃やしているべし)


 そう。

 闘志を燃やしているのであって。

 決して、自分の憧れの毛を持つ狐に嫉妬の炎を燃やしているわけではないのだ。











(2023.10.5)



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