第13話 変化
『鬼灯県』と『竜胆県』を侵略するためのやり取りだと知らされていないのか。
それとも、知らされているが恋文だとすっとぼけているのか。
もしくは。
本当にただの恋文で、姫と王子が侵略云々の噂は真実ではなく、嘘偽りなのか。
(どちらにしても文の内容を確かめなければ。しかし)
『私と一緒に恋文を守ってください』
勝手について来た狐と狼によくこんな願いを口にするものだ。
土下座までして。
(いくらあの店主が。いや、昼間に会ったこいつの仲間が私たちを特別だと連呼したとは言え)
狐は、いや、狐に変化した禾は、自分と同じく狼に変化した汐黎を見た。
汐黎は禾の視線に気づいては、目を細めた。
動物だと警戒心が弱まるだろう。と考える事は同じだったのだろう。
しかも図ったように、弥栞の肩に着地する瞬間まで同じだったのだ。
二人の存在にまったく気づいていなかった弥栞の肩の上で、匂いで相手の正体に気づいては蹴落とそうと激しくも音のない闘いが行われていたが、結局決着はつかず、二人共にこの空の城に潜入する事に成功した、というわけである。
だったら初めから動物の姿で近づけばよかったではないか。
そう思うかもしれないが。
単純に、禾も汐黎もこの動物の姿が嫌だったため、もう最終も最終手段として取っておきたかったのだ。
((あ~~~。早く人間の姿に戻りたい))
(2023.10.5)
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