第8話 作戦




「今からあんたに説教します」


 『菫県』に用意されたとある隠れ家にて。

 シルクハット、マント、タキシード、革靴が白一色に染まる中、唯一丸サングラスだけが黒の性別不明の人に、助けたんだから今度俺たちが危機に陥った時は助けろよと言い置いてここに戻って来た、忍び装束で全身を隠す忍びである星明せいめいは立って腕を組んだまま、畳の上で正座になり、傍らに日本刀を置いている袴を身に着ける相棒、汐黎せきれいに相対した。


「いいか?あんな人目がある中で標的をあんなに堂々と追いかけたらだめだろうが。つーかそもそも追いかけたらだめだろうが。かしらはあんたが隠密っぽいから、標的も知らない内にささっと文を奪い取って、ささっと中身を読んで、ささっとまた戻せるだろうって考えてたし、俺もあんたにはそれぐらい朝飯前だって思ってたんだよ。標的が両手に文を持ってようが、標的もわからないくらいの速さでささっとやれるって。それがどうしてあんな目立つ事をしてんだよ。なあ?」

「俺もおまえに確認したい事がある」

「何だよ?」

「あの弥栞って飛脚。特別な能力があるわけでもない平々凡々な少女だって言ってたよな」

「ああ。調べた限りでは。まあ。あの姫と王子の飛脚をしてんだ。そうそう容易く能力を見せてないだけかもって話もしたはずだよな。だから慎重に事にかかれって言ったよな?」

「覚えている。が。俺も印象では平々凡々で特別な能力があるようには感じられなかった」

「それでも文は奪い取れなかったし、逃げられもした?」

「ああ」

「………やっぱ。あの作戦しかないかもな」

「………嫌なんだが」

「あんたが嫌がる気持ちは重々承知しているが、任務遂行が第一。だろ?」

「まあ。な」

「じゃあ。そういう事で」

「ああ」











(2023.10.2)



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