第7話 飛脚
(………術が発動しなかった)
『菫県』の姫と『水仙県』の王子が、『鬼灯県』と『竜胆県』の侵略を企むやり取りが記される文を持つ少女。
名を
姫と王子、二人の文を送り届けている。
一県の姫と王子の、二人の文を、あの少女が一人で、だ。
平々凡々の少女に、そんな重要な責務を負わせるか。
否。
負わせるわけがない。
ゆえに。
(氷の術が発動しなかった理由も頷ける、か)
飛脚の足を目に見えぬ氷で留めてのち、両の手にしかと持っていた文に触れて複製して、氷を溶かして、立ち去る。
それで仕舞いの簡単な仕事。
だったはずだ。
(もしかしたら、人目につかない道を選ばず、誰かしら民衆がいる道路を選び、これ見よがしに文を手に持って送り届けているのも、私たちみたいな刺客を引き寄せる為にわざとしているのかもしれないな)
そうだ、そうだとしか考えられない。
つまりは、まんまとおびき寄せられたわけだ。
(っふ。私とした事が)
「………なあ。どっかの誰かさん。黒丸サングラスと超でかい蝶ネクタイのせいで表情がほとんど見えないし。何も言わないし。どうしようか?」
「さあ」
忍びが相棒に話しかけると、相棒は首を傾げるのであった。
(2023.10.2)
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