第6話 雪狐






 いいかい。


 私と妹を拾ってくれた恩人であるこの方は仰った。


 私以外誰も信じてはいけない。

 私の言葉が絶対で唯一なのだ。


 もちろんだ。

 誰も救ってくれない中、この方だけが私たちに手を差し伸べてくれたのだ。

 この人以外、誰を信じると言うのだ。


 ありがとう。

 そう笑ったこの方はいつもいつも優しく、正しかった。




 だから今回も。




 『菫国』と『水仙国』が私の、私たちの国を壊そうとしている。

 何としてでも止めなくてはいけない。

 まずは、情報収集だ。

 主犯だと疑われている『菫国』と『水仙国』の姫と王子の手紙の中身を秘かに読んで私に知らせておくれ。


 おまえならできるだろう。

 術を使える、雪狐のおまえなら。




 だから今回もこの方は、正しい事をしようとしているのだ。











(2023.10.2)



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