第4話 四つの県




 一つの大陸に、それぞれ統治している四つの県があった。

 『すみれ県』『鬼灯ほおずき県』『竜胆りんどう県』『水仙すいせん県』である。

 『菫県』と『水仙県』は協定を結び、お互いの領地の中にそれぞれの城を作っていた。

 『竜胆県』と『水仙県』はどことも協定を結んでいなかったが、四つの県は基本的に不干渉の形を取っており、平和な日々が続いていた。




 『鬼灯県』と『竜胆県』に噂が流れるまでは。

 『菫県』と『水仙県』が『鬼灯県』と『竜胆県』を侵略しようと企んでいる、と。

 主導しているのは、それぞれの姫と王子だ、と。




 ただの噂だと一笑に付す者もいれば、真実だといきり立つ者もいた。

 そして、後者の者が命を下した。

 まずは情報収集だ。

 姫と王子の文を秘かにすべて奪うのだ。

 いいか、秘かにだぞ。

 誰にも知られずだ。

 わかるな。うん。わかっていると信じている。

 え?あいつに任せて大丈夫かって?

 大丈夫大丈夫、あいつ超腕立つじゃん。顔もなんか隠密向きっぽいし。

 大丈夫だって。

 ねえ。


(大丈夫じゃありませんでしたあああ!)


 見失った相棒をようやく見つけた忍びは、めちゃくちゃ心の中で叫んだのであった。











(2023.9.24)



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