第3話 届ける
(ああもう!手紙を寄こせ渡せって!何なのもう!頭の中に直接声が聞こえる!一人じゃないし!二人ともだし!)
姫に恋をしているのか。
王子に恋をしているのか。
二人の恋愛を邪魔したいだけなのか。
二人の恋愛を邪魔したい誰かに雇われているのか。
どれかなんてさっぱりわからないけど。
(もしも恋をしちゃっているなら、姫と王子は相思相愛で割り込む事なんてできないから諦めてよね!)
「手紙は諦めてよね!」
しつこい二人に叫んだ。
城門はもう目前だ。三人の警備兵もいる。よしこれでもう安全だ。恋文は。
私の命は。
安心して、警備兵に助けてと駆け寄って、開かれた門を潜ろうとしたところで。
あれちょっと待てよ、と、足が止まった。
恋文は死守したけど。
本来、この恋文は王子に届けるものだ。
王子に届けて、王子からの恋文を受け取って、姫に届けるまでが仕事だ。
姫はとても、とても、自分の恋文が王子に届くのを、そして、王子からの恋文が届くのを待っている。
待っているのだ。
もしも、もしも、自分の恋文が届かず、王子からの恋文も手元に届かなかった。なんて。
どっちも届けられませんでした。
なんて、どう伝えれば。
(………伝え、られるかあああ!!!)
「警備兵!あの二人は姫を脅かす敵よ!さっさと捕まえなさい!ただし一人は絶対城門から動かないで!」
「「「は、はい!」」」
主が待っている空色の城に背を向けて、警備兵二人が立ち向かう敵からも背を向けて、また駆け走る。
遠回りにはなるけれど、王子の白の城へと。
「絶対届ける!」
(2023.9.22)
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