第2話 ぽやぽや
色ボケ姫、もとい私の主は、いつもいつもぽやぽやしていた。
国を想う気持ちなど皆無、恋の事しか、愛しの王子の事しか考えていないのでは。
国王の側近や重鎮たちはとても失礼な事を言っているが、少しだけ頷く。
うん多分、九割九分は王子の事を考えている。
でも、一分はきっと。うん。国の事を考えているはずだ。
ぽやぽやおっとり、王子以外に興味を持たず、どうでもいいと優しい笑みで見逃しているけれど。
一度だけ。たったの一度だけ、主が怒っている場面に遭遇した事がある。
普段優しい人が怒ると怖い。
なんて聞くが、怖いなんて言葉では言い表せない。
刃物だ。
人を殺す凶器だ。
きっと命の瀬戸際にいるあの人は王子関連で何かしでかしてしまったんだ。
(だったら私も)
もしも。
もしもだ。
この恋文が。
愛しい王子への恋文が。
誰かに奪われた、なんて日には。
(………私も)
走る走る走る絶対に逃げ切る。
ひとくくりに結んだ紺青色の長い髪をふわりふわりと浮かせては沈ませる、髪と同じ色の袴姿で草履を履き、日本刀を腰に携える男性と。
シルクハット、マント、タキシード、革靴が白一色に染まる中、唯一丸サングラスだけが黒の性別不明の人から。
(いやだー!!!絶対に主に怒られたくない!!!)
走って走って走って走り抜いた。
主が住む空色の城まで。
(2023.9.22)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます