②
先ほどの丸いわんこのお尻を頭に思い浮かべながら、また自転車を走らせる。まだ少し冷たい風が吹いて、前髪が靡いた。
私は神社が好きだった。地元でも、家の近くの神社にほぼ毎日のように通ってぼーっとしていた。
こちらでもそんな、気軽に通える神社を見つけておこうと思って、適当に神社がありそうな道を探ってみる。
公園とは真逆の方向に、ひっそりとした神社があった。ここだ!!と、人の気配がしないその神社に、胸が弾んだ。
こういう、宿舎が基本的に無人で、御朱印さえもない、大きいけれどそこまで規模はない『ちょうどいい』神社が、私のぼーっとタイムには打って付けなのだ。
自転車を近くに停めて、一礼をして鳥居をくぐった。
賽銭箱に小銭を投げ入れて、お参りをする。顔を上げると、すぐ紙に髪があった。
どうやらこの神社では、月ごとに言祝ぎがあるようだった。
3月の言祝ぎが綴られた紙を一枚、カバンの中にしまった。
空気感を味わって、ほっと一息。これから頑張るぞ。そう、心から思った。
神社を出て、今度はちゃんと名の知れた神社に行ってみようと思って、ちょうど職場の近くにある大きな神社に向かった。
たどり着いて、駐輪場に自転車を停めた。すぐ近くに、池と、ちょっとしたベンチがあって、そこで釣りをしている老人たちがいた。
「こんにちは。何か釣れるんですか?」
声をかけてみると、困ったように笑って。
「こんにちは。そんな大したものは釣れないよ。暇だから、こうして糸を垂らしてるんだ」
なるほど、こういう老後も楽しいかも知れない、と自身の老後を考える。まぁ、まだ若いからそんなこと今から考えてても仕方ないか。
改めて、神社に足を踏み入れる。
なかなかいい雰囲気だった。鳥居をくぐると左右に牛がいた。かっこいい。
お参りをして、御朱印をもらう。満足だ。が、気づけば1時過ぎ。何を食べようか。
「すみません、この辺で美味しいご飯屋さん、ありませんか?」
試しに宿舎の人に聞いてみる。
「そうですねぇ。この辺だともうしまってるお店も多そうですけど、もう少し先に行けば大通りに出て、いろんなお店ありますよ」
と、快く答えてくれた。
「ありがとうございます」
踵を返して、神社を出る。信号を渡って、反対側を自転車で通る。
雰囲気のいい小物屋さんがあった。思わずブレーキをかけて、中に入ってみる。
店内には可愛らしい小物、照明、コーヒー豆など、様々なものが並んでいた。
コーヒーが好きなので、何か買っていこうかなと思って、簡単に作れそうなパックのコーヒーを買ってみた。ここでも、同じ質問。
「この辺で、何かおいしくておすすめのお店とかありますか?」
お店のおばちゃんが、目をぱちぱちとさせて、そうねぇ、と呟いた。
「今の時間だと、中華調理屋か、本格的なおしゃれなカレー屋さんなら、やってると思うけど」
そのつぶやきに、他の店員さんが口を挟んできた。
「あと洋食屋さんもやってますよ!」
「ほんとですか?」
「ええ、でも急がないとラストオーダーすぎちゃうかも」
言いながら、その三つのお店の簡単な地図を書いてくれた。
「ありがとうございます!!」
お礼を言って、お店を出る。と、おばちゃんがわざわざ出てきてくれて、あっち曲がるんだよーと、教えてくれた。
それにもお礼を言って、自転車を走らせる。
カレーが食べたい気分だったので、地図を見ながらカレー屋さんに直行だ。
さて、たくさん食べるぞ!
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