ニンゲン
満月凪
第1話 新しい生活
私は4月から、新卒としてとあるパティスリーで勤務することになった。
小さい頃から夢だったパティシエ。専門学校にも行っていなくて、製菓に関する資格も持っていない私を、そのお店のシェフは受け入れてくれた。期待に答えるためにも、頑張らなくてはならない。
実家から勤務するには遠い場所で、初めての一人暮らしが始まった。
引っ越しは両親が手伝ってくれたため、正直そんなに苦労はしなかった。ベランダも広く、マンション自体も綺麗で気に入っている。あぁ、ここが私の第二の家だと、胸を張っていえた。
今は3月。まだ研修として、アルバイトで働いてる。今のうちにこの街を探検しておこう。
さぁ、行き当たりばったり旅の始まりだ。
母が買ってくれた自転車にまたがり、マンションを出る。今日は天気がいいから、きっとサイクリング日和だ。自然と口元が綻んだ。
さて、さっそく分かれ道。左に曲がってまっすぐ行ってみるか、右に曲がって坂道を下ってみるか。どちらにしようか。
なんとなく、坂道の突き当たりにあった門が気になったので、下ってみる。予想外にも、学校だった。地元ではあまり馴染みのない学校の門だったので、驚きだ。
それから、左に曲がって、踏切を渡った。野球場があって、少年たちが一生懸命に野球に取り組んでいた。いいね、青春だ。
それを横目に見ながら、自転車を漕ぐ。少し行くと、川があった。なぜかテンションがとても上がって、写真を撮った。ちょうど桜が満開の時期で、花びらがひらひらと川に落ちていく。
我ながらいい写真だと、自画自賛をして、友人に写真を送りつける。また少し行くと、なにやら規模の大きそうな、大きな噴水つきのマンションを見つけた。
誰でも入れそうだったので入ってみる。なんと、隣に大きな公園があった。試しに公園を散策してみようと思った。
桜の写真や、公園の雰囲気。流れる小川の音。とても心地がいい。奥まで行くと、たくさんの桜に囲まれた空間があった。舞い落ちる花びらをキャッチしようと、反射的に手を伸ばす。一枚ゲットした。帰ったら、記念に押し花にでもしてもいいかもしれない。まぁそんな細かいこと、きっとやらないのだろうけど。
そんなことを考えて、少し歩く。散歩中の犬が近くに寄ってきた。しゃがんで、手のひらの匂いを嗅がせる。
飼い主がにこにこと笑った。
「今日は天気がいいですね」
そう、言われたので。
「そうですね。散歩日和です。わんちゃん、かわいいですね」
そう、返答した。
「ありがとうございます。ここの公園、広くていろいろみるところあるから、楽しんで行ってね」
「はい。ありがとうございます」
にっこりほほえんで、犬を連れてどこかに行った。
やっぱり、動物は可愛い。
犬のお尻を眺めて、そう思った。
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