決着

 お互い残機ひとつでの戦いは、丁寧で、それでいて激しかった。

 攻撃、防御、回避、ステップ、ジャンプ。攻撃、防御、フェイント。


 観戦していた寿人も彼らの攻防を見ているとなんだか気分が高揚してきた。それはまるで踊るような戦い。悪態をつき合っている二人とは思えない、美しい作品。


 それは当人たちも感じていた。

 CPU戦しかやったことのない修斗も。

 この世に退屈を感じていた幹彦も。

 彼らは当たり前のように受付時間が1/60秒しかない技を当て、躱す。

 ワールドクラスの二人だから成り立つ芸術。

 滴る汗も気にならないほどの集中。

 この時間が一生続けばいい。そういった気持ちを、じわじわと蓄積していくお互いのダメージが否定する。

 攻撃、防御、回避、ステップ、ジャンプ。


 そして終わりは、突然訪れた。



「――ッッ!」

 修斗の操作キャラクタが、防御に失敗し、硬直する――!

 今までの様子からは。傍観していた寿人ですらその異常性に気が付いた。

「なんッッ」

 その硬直の隙に、幹彦は大技のモーションに入る。


「お前は強かった」


 その言葉と同時に、修斗のキャラクタに大技が叩き込まれた。


 決着――――。

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