第18話「一度きりだから」
「さっきと気持ちが変わって言いたく無くなったって言うなら別に言わなくてもいい、そこは裕涼に任せる」
昼休み、誰もいない中庭のベンチで柊優がいう。
「いや、大丈夫。聞いてくれるか?」
優しく僕の言葉を待ってくれている柊優にそう告げる。
「もちろん」
優しく言ってくれた柊優に胸をなでおろす。
「ありがとう」
そう感謝の言葉を口にして僕はゆっくりと話し始める。
「実は———」
♢♢♢
「そっか、そんなことがあったのか」
僕がWebで小説を書いてることも含めて全てを話し終えるとその内容を噛み砕くように柊優が呟いた。
「これから僕、どうすればいいか分からなくて」
ひと呼吸置いてから柊優は言う。
「俺は恋愛経験とかほぼ無いからさ、具体的なこととかアドバイスしてやれないけどさ、今は裕涼の思うままに動けばいい。周りの目なんて気にしなくていい、ただ自分のわがままでいい。だってそうだろ?」
ニヤリと笑って続ける。
「青春って、1度きりしかないんだから!」
「そう…だよな、俺のやりたいようにやればいいんだよな」
「ああ」
「ありがとな、柊優。少し気が楽になった」
僕は頭を下げて柊優に感謝の意を伝える。
「あんな回答で良かったのか?」
「うん、今は自分のやりたいことをするさ」
中庭から見える青空を眺める。
ちょっとした気持ちの変化だけど、少し青空が嫌いじゃなくなったかもしれない。
それくらい、今の心は晴れていた。
「そっか、良かった」
「じゃあご飯食べよっか、授業始まっちゃうしね」
そうして僕らは2人で何気ない話で盛り上がりながら青空の元お昼ご飯を頬張るのだった。
♢♢♢
「ただいまー」
誰もいない家に向かって帰りを告げる。
今日は母も夜まで仕事に出ておりずっと1人ということになる。
「はぁ、今日も疲れたな」
制服を脱いで部屋着に着替えた僕はベッドの上に寝転がる。
「お!この人の絵めちゃめちゃ上手い、リツイートしとこ」
ゴロゴロとしながらSNSを見る。
「ふーん?千葉トッテいま一位なんだ」
絵とか漫画系に限らずスポーツまで、幅広く巡回する。
「あ、DM何件かきてるな、返信しなきゃ」
おそらくみあが広めてくれたおかげか僕の作品は書籍化レベルに伸びていた。
そのおかげでSNSの僕のアカウントもめちゃめちゃ伸びたのだ。
100人ちょいだったのが今や7800人、アイドルみあちのパワーすごいな。
そしてDM欄を開いて確認しようとする。
「どれどれー?………え?」
驚きの内容に空いた口が塞がらなかった。
「………書籍化打診について…!?!?」
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