第4話「友達と妹」

♦︎♦︎♦︎


 で、今に至ると。


 正直友達になることに抵抗は無いが強いてひとつ懸念をあげるなら今までの生活とは変わってしまうかもということだ。


 七海さんがこんな僕なんかに友達になって欲しいなんて言ったことも不思議だし何か嵌められるのではないかとかちょっとした懸念とかもある。


 だけど今目の前で彼女が浮かべているこの表情上目遣いを見てしまったら断れるはずもない。


「もちろん、こんな僕でいいのなら」


 すると七海さんは顔をぱあっと明るくした。


「良かったぁ、断られたらどうしようかって不安で…」

「断るわけないじゃないですかー」


 僕は笑いながらそう言った。


「そうだ!せっかく友達になったんだしどうせならタメ口で話そうよ!」


 ふと七海さんはそんな提案をした。


「天音のことも七海さん、じゃなくて天音って呼んでね?」

「そ、それはちょっとハードルが高いと言うかなんと言うか……?」

「名前で呼んでくれないと天音怒る……」


 すると七海さん…天音は頬を膨らませてジト目を向けてきた。


 か…可愛い……!


 今まで女子とあまり接してこなかったせいか可愛いと明確に思ったことはなかった。


 ………いや、遥か昔一度だけあったか。


 ただ長らくの間女子にそういった感情を抱いてこなかった僕は少し不思議な感覚に見舞われる。


「できるだけ頑張るけど学校だけでは七海さん呼びで許して?」

「分かった。じゃあ一回だけ…」

「…?」

「い…一回だけ今言って…‥ください…」


 語尾に近づくにつれしぼんでいった天音の言葉だが、言いたいことは大体わかった。


 まあ急に名前呼びされるより慣れといた方がいいもんな。


「分かったよ、天音」


 僕がそう言うと天音は顔を背けてしまった。


 そんなにキモかったか僕!?


 ちょっとショックを受けた僕はコーヒーを啜ってその気持ちを誤魔化すことにした。


「ありがと、裕涼」


 すると天音はぼそりと呟いた。


 何故だかその感じが妙に懐かしく感じて胸が熱くなった。


 結局その後は連絡先を交換し、他愛もない話を2人でしてから帰路についた。


♢♢♢


 僕は家に帰ってからいつもの通り小説を書く作業をしようと思っていたが玄関に入った先に待ち構えていたのは中学3年の妹、更科みあさらしなみあだった。


「お兄ちゃん……、昨日約束したよね?」


 今のみあは笑っているが実に怖い目の奥をしている。


「はい…反省してます」

「みあが楽しみに待ってた時間はどこにいっちゃったのかな?」

「い…今からでも遅くはな……」

「質問に答えて」

「ごめんなさい……、僕にはわからないです」


 妹が怖い……、いや僕が悪いんだけどね?でも流石に怖いっす。


「みあずっと待ってたの」

「はい…」

「みあって普段何してるか知ってる?」

「知ってます、アイドル業ですよね」


 その言葉の通りみあは弱冠15歳にして日本が誇る大人気アイドルグループの一員である。


 可愛い妹がたくさんの人に認められていて兄としては鼻が高い。


「そうだね、じゃあいつも忙しくて家にいないことが多いのになんで今日みあは家にいると思う?」

「仕事が休みだからです…」

「仕事が休みの日ってどう言う約束だっけ?」

「お兄ちゃんとみあは一緒に遊ぶ約束です…」


 するとみあは一転、泣きそうな表情をして話す。


「そうだよぉ!今日は合法的にお兄ちゃんといちゃいちゃできる日だったのにぃいい!!」


 そう、今日本が誇る大人気アイドルの1人であり、更科裕涼の中学3年の妹でもある更科みあは極度のブラコンであったのだ。













〜〜〜〜〜〜〜〜

兄貴もこりゃシスコンですな

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