第13話 ドキンコ、ドキンコよ!
その夜、ルイの気配で目が覚めてしまってからリンは全く寝付けなかった。テントで寝ることは今までもしょっちゅうある筈なのに、この狭い空間の中でルイの息づかいや寝返りなどにいちいち反応してドキドキしてしまう。どうやらルイも同じように寝付けないでいるらしかった。お互い、先に寝てくれないかと様子を窺っているせいで、なおさら寝付けない。
しびれを切らしたリンが、先に口を開いた。
「・・・ごめん、ルイ。ボクドキドキが止まらなくって、どうしても寝られないんだ。多分・・・ルイの・・せいだと思う」
ダメなのは分かっていた。だって、ルイはリッチェのことが大好きだから。きっと、これからずっと悲しい気持ちのまま旅を続けなくっちゃならない。竜と主人の関係が気まずくなったからって簡単に離れられない。それでもやっぱり、今の自分の気持ちを知ってほしかった。
「リン・・・オマエもか・・・実はオレも胸がバクバクしちまってて、どうにもならなかったんだ・・・。リン、ゴメンな・・・」
”あぁ!ルイも同じ気持ちでいてくれたんだ”リンはすう~ッと目を閉じこれから起きるであろう全てを受け入れようとした・・・”ボク、うれしいよ・・・”
「いや~~。動悸がひどくてまた死んじまうかと思ったぜぇ。あぶらい(あぶない)とこだったな!オレもまだ若ぇつもりでいたけど、やっぱ、バラの脂、きっついな!ま~だ胸がドキンコドキンコよ。もう少し脂落とせば良かったぜ。ごめんな・・」
「・・・あぶら?はぁ?!脂?!あぁそう、脂だねぇ。はいはい、あぶらいとこでしたねーー・・・。ははは・・何だか力抜けて・・・。寒くなったけど、イライラするから水浴びしてくる!!ルイの、バカ!!」
”ああああ!何なんだろう?なんであんな唐変木だしオッサンだし、つまんないことばっか言ってるし、ホントなんで好きになっちゃったんだろう?っていうか、そもそもこれ、「好き」でドキドキしてるのかな?実はボクも脂がだめになってたり?そんなわけないか。あ、ダメだ。考えるとムカムカしてきちゃった!早く頭冷やして、とっとと寝ちゃお!”
ちょっと離れた岩の裏側に、大人ひとりが浸かれる位の水たまりがあった。テントからは見えないところに行き”ちょっとだけ”とリッチェの姿になった。ただ、髪の毛が体にまとわりつくのが嫌なので肩にかからない位の長さにしてみた。水を手ですくいパシャパシャかけてやると、球の様に弾けて身体を滑って行った。
「ボクも竜じゃなくて、ヒトとかエルフに生まれたかったな。そしたらルイもボクを好きになってくれたかもしれないのに・・・」
自分の両胸をすくいあげるように一度持ち上げて放してみた。プンっと小ぶりの胸が躍り水滴が周りに飛び散る。手の平に擦れて行った両乳首がリンの頭の中に、チリッとした感覚を残していった。
「自分で言うのもなんだけど、ボクの変身はかんぺきだとおもうんだよな・・・。このカッコでルイの前に行きたいな・・・・そしたらルイも・・・。ううん、きっと怒られちゃう。リッチェにも悪いし・・・。でも、でも、このままルイに触れたい!ギュ~ってされたい!っていう気持ちがとめられないよ。ボク、どうしたらいいんだろ?」
その場に立ちつくしたまま、右手が胸、左手は下の方へと伸びそれぞれ弄り始めた。竜は性的な本能など持ち合わせてはいない筈だが、変身の影響なのだろう。
「あっ・・・コレ、気持ちいい。だめだ・・とめられない・・・。あぁ・・ルイ・・ルイに・・これがルイの手だったら!」
右手の人差し指と中指でかるく乳首を挟み胸ごと揉みしだく。キュッと強く挟むと、まるで探し物をしているかの様な仕草の左手に力が入り、その度に頭の中がピリッとする。何度か繰り返しているうちに薄皮に包まれた小さな探し物に指がたどり着いた。そこを優しく円を描くように撫でみる。
「あっ?!・・・んっ・・ここ、だけ・・・なんか・・すごいや・・・」
頭の中のピリピリが次第に強くなり、段々とより強い刺激を求め始めて指の動きが速くなってきた。
「ホントに、ダメだ・・・もぅ、止められない・・・ここ、背中を掻いてもらうよりも、ずっと気持ちいぃ・・・身体を・・流さなきゃ・・なのに、ドンドン、ヌルヌルしてきて・・・ビクッて、なって・・・あっ・・ボク・・ヤダよ・・ボクじゃ、なくなりそうだよぉ」
「っ!!!」
指が小さなシコリを弾いた途端、頭の中が一瞬で真っ白になり、全身の力が抜けてペタンとへたり込んでしまった。
「っ・・ハァ・・ハァ・・。大丈夫・・よかった・・ボクの、ままだ・・ハァ・・ハァ・・・。もぅ、これやめよ・・なにか、いろいろダメな気がする・・・」
頭ではそう思っているのに、今まで触り続けていた部分が熱を持って疼きが止まらない。ダメだと言いながらもいまだに手が離せず、指がまた動き始め、中指を根元まで膣に沈めた。
「おーい、リン~。何処だ~?大丈夫か~?」
”ああ!ルイがボクを探してる!でも指が、あっ・・とまら・・・あと少し、あと・・少・・し・・あっ・・来る、来るよぉ・・・”
幸いなことに岩のお陰で向こうからは分からない。
ルイに見つかる前にイッてしまいたい。差し込まれた中指の速度を上げると卑猥な音が一段と大きくなった。
”んっ・・・んんっ!・・音が・・グチュグチュって・・聞こえちゃってたら・・・あっ・・見つかるよぉ・・でも、もぅ・・もぅ!”
この行為をルイに見られてしまうかも、そう思うと余計にリンの感情を高ぶらせより深い絶頂を迎えた。
「くっっっ!!!」
指を噛んで声を押し殺しはしたが、全身の痙攣がどうにもならない。ガクガクする腕を懸命に伸ばし岩肌をつかんで立ち上がろうとするが、どうにも、脚に力が入らない。
このままでは見つかってしまうのは時間の問題であった。頭がぼうっとして、どうすればいいのか思いつかない。
「おい、リン。そこか?」
岩肌にルイの大きな手が見えた瞬間、心臓が止まりそうなほどビックリして、図らずとも変身が解けた。と、同時に粘液やら汗やらがパタタッと下に垂れ落ち、苔にゆっくりと吸い込まれていった。
「わあっ!!あっ、ルイ!えっと・・・ちょうど今帰ろうとしたところ!お水浴びてスッキリしたよ。ルイも浴びたら?」
心臓はドキドキするが、竜の姿に戻ると身体の疼きなどが消えていた。ただ妙にスッキリとして気分がいい。
「ああ、そう思ってな。その岩の後ろ、水たまりか?」
確かめる前に既に上着を脱いで、岩に手を掛けズボンを脱ごうとしている。
「あんだよ、見んなよ」
「・・・ルイ。その肩の所、なんか、ヒトの手形みたいなアザが出来てるよ?前は無かったよね?」
「ん~?自分じゃ見えねぇな。ナンかにぶつかったか?まぁ、そのうち、消えんだろ。それよか、ほれ、先にテント帰ってろ」
別に欲求が残っているから見ていたのではなく、何となくそのアザが気になったからだ。いままでも怪我やアザなんてものは、しょっちゅうあったし、心配する様な事はあっても、
”気になった”
というのは初めての事だった
「まっ、気のせいかな?・・・でも危なかった~。ビックリして元に戻れたから良かったけど、あのまま見つかっちゃってたら・・
でも、見られたいような・・・。ま、いいや!な~んかスッキリしてるし、気持ちよく寝れそうだ♪」
とても上機嫌でテントヘ向かうそんなリンを見送ってから下着を下ろした。・・哀れだ、惨めだ、そして痒い。街に着いたら先ず、薬草買おう。
「薬草を~煎じて~塗りましょ~う。スリコギで煎じて塗~りましょう。・・・薬草は、まず焼くそうです」
白いスカーフ一丁で片手は腰、もう片手は自分のナニを握りしめ、スリコギ棒のつもりで振り回す。(毛無しよりもこちらの方がヒトとして、見られたくは無いと思うのだが・・・)
「・・・こいつも、ダイブ使ってやってねェ~な。ただの蛇口になり果てたぜ。アレもたまにゃ出してやらんと、腹ん中で腐っちまったりしてな。んなわけないな。
・・・だって、何かがでちゃう。男の子だもん!ってか!」
くっだらない事を言いながら先ず一口水を飲む。”あぁ、美味い。この森が豊かである証だな。”冷たく、清廉な水が体に浸み込む気がして、もう一口飲んだ。
「この水が、あの湖に流れ込んで行くんだよな。先ずはあそこに行って、神聖な水の力をクリスタルにして、ネックレス・・・は邪魔か。ピアスにするかな。
リッチェを送ったあの湖の水を肌身離さず持ち歩きてぇんだよ。・・・やっぱ、ピアスだな」
二口ほど飲んだ水のお陰で喉やら胃やらにこびり付いた脂が流れた気がする。
「おおぅ!何か、スッキリしたな!気持ちよく寝られそうだ!」
再びテントへ戻ると口からよだれを垂らしてリンはもう寝ていた。そっとタオルケットを掛けてやり自分も横になった。
目が覚めると、リンがオレの腹の上で寝ていた。明け方の朝露でテント内が肌寒かったせいだろう。そっとクッションの上に寝かし直してから外へ出てあたりを見わたす。そういえば、昨晩の牛喰いフクロウはいつから居ないのだろうか。辺りに魔獣の気配がないのを確かめ、ベラから渡されたバスケットの中から、バケットとチーズを取り出してそれぞれスライスした。朝飯の用意が整いリンを起こしに掛かる。
”寝起き悪ぃ~んだよなぁ。無理やり起こすと噛みつこうとすっからアブねぇんだ。昨日は遅くに寝たから、自分じゃ起きねぇだろうしな・・。おー、コワ”
しかし、なるべく先を目指してぇし、仕方がないが揺すって起こすか。
「リン、テント片付けっから起きてくれ。先に朝飯食っててくれよ」
「ん?んん~っ、ふあぁ。おはよう、ルイ♪片付けるの?手伝うよ、一緒に食べよ?」
「ああ、ありがとう・・・どったの?なんか、こう・・何にも出ないよ?」
朝からご機嫌なリンが怖い。オレ、何かしたか?覚えがないのが余計に怖い。取り敢えず、機嫌を損ねない様に注意しなければ!
「んじゃあ、頼もうかな。そこの枝から護符を剝がして来てくれ。そっとだぞ?落とすと発動しちまうからな、気を付けてやってくれ」
「うん、わかった。そこの岩にならべておくね♪」
オレがテントを畳みカバンに丁度しまい終えたとき、リンが口から閃光の札を落としてしまった。地面に落ちるや否やバッと強い光を札が放つ!!
「やばい!」「ごめん!」オレたちは咄嗟にうしろ向きになり、目を庇ったがそれでもチカチカする。まともになら、2~3時間は目が見えなかったろう。
「ごめんなさい。なんか、まだ、寝ぼけてたみたい」
決して寝ぼけていた訳ではない。テントを片付けるルイの横顔に見とれてしまっていたのだ。弱くはあるが、未だに光を放つ札を見てしょげているリンに
「ま、そういうこともアルデンテよ。おぉ~、まだ目がチカチカすんな。ヒトに使ったことはあるが、自分で喰らうのは初めてだぜ。ハハッ、結構利くな!」
そう励ましの声をかけ頭を撫でてやった。ちょっとうれしそうに顔を上げたリンの顔色が変わる。
「ルイ!あれ!!こっちに来るよ!」
朝とはいえまだ薄暗い森の中だ、目立つのだろう。光を放つ護符めがけてデカいのやら小さいのやら、虫共が塊りでこっちに向かって飛んで来やがった。虫自体は大した問題じゃない。
厄介なのは、その虫共を餌にしている魔獣がここに来ちまうってことだ。奴らからすればオレ達も虫みたいなもんだ、餌にされちまう。
危険を察したリンはもうカバンを咥えて剣の腰ベルトをオレに投げてよこした。その場から急いで森の中へ逃げ込もうと必死に走る背中越しに
「バキバキ!ボキン!メリメリメリッ!!グジュッ!!」
と嫌な音を立て早速虫共が喰われている。振り向きたくはない。オレは虫も苦手なのだ。蛾の腹や甲虫の関節の産毛なんかは拷問に使える位、気持ちワリィ!!
虫を無視して森へ逃げ込むオレたちを、いつの間にかに現れたフクロウが見送っていた。
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