第19話 類は友を呼ぶ
多目的ホールに入ると長テーブルが等間隔に配置されていて、対面するように椅子が設置してあった。
すでに何組もの集団が長テーブルに座ってお弁当を広げている。男の子のグループもいるけど、圧倒的に女子のグループの方が多い。
おひとり様席も窓際に設置してあって、そこにも数名の生徒が座っているのだけれど、こちらは男子生徒しかいない。
おひとり様席に座りたい衝動を抑え、あいかさんグループに混じって私も長テーブルに設置してある椅子に座る。
とりあえずあいかさんの隣をキープしなきゃね。
入口を見ると続々と生徒達が入ってくる。意外にお弁当持ちの生徒多いんだね。
私達のグループもお弁当を広げてはじめたので、私も急いで広げる。ちなみにキラキラのお弁当箱ではなく普通のお弁当箱です。
もちろん扇木さんと葛藤があったのだが今は割愛しておこう。
皆が広げたお弁当が目に入る。手作りのお弁当だったり、冷凍食品が多めのお弁当だったり、あきらかに外注したお弁当だったりと様々だ。
中には水筒にお味噌汁を持ってくる人もいて、今度私も真似しようと誓う。
お弁当の大きさもバラバラだが、比較的大きなお弁当が多いことに気づいた。女の子のイメージは少食だったけど間違いだったのね。
いただきます。って言いながら各々食べ始める。私も同じようにいただきます。って言って食べ始めた。
沙月ちゃんのお弁当は誰が作ってるの? ってあいかさんじゃない向かいの席に座ってる子が聞いてきた。名前はたしか……木田さんだったかな? 三田さんだっけ? あれ? 伊田さんだっけ?
ちょっと名前があやふやな子に、自分で作ったと言ったら驚かれて、女子力高いね! って言われた。
自宅治療だったからその時に覚えたって言ったら、なるほどねぇ。って納得してもらえた。
……ちょっとの会話でも神経を使うなぁ。辻褄を合わせるのは楽じゃないね。
「あいぷー、はろはろ〜」
そんな他愛もない会話をしていたらあいかさんに話しかける人が現れた。
「あっ、ちぃちゃん、はろはろ〜」
あいかさんが声をかけてきた人に応える。
「今日の部活は三年生が来るみたいだから、ハードになるかも〜」
「えーほんと!? 夏休みにちゃんと練習してたか確認しにくるのかなぁ」
「そうかも〜、うちら一年生は弱っちいから」
見たことない子だからクラスメイトじゃないな。話しの内容から部活の仲間なのかな?
あいかさんと話してる子は背丈が割と高く短髪でいかにも体育女子って感じ。だけどあまり日に焼けていない。
屋内競技かな? 何部だろう?
様子を窺っていたら私に気づいたあいかさんが、紹介してくれる。
「この子は同じ部活のちぃちゃん」
……
「って終わりかい! もっとちゃんと伝えて!」
背の高いお友達がツッコむ。私と同じ事を思ってたらしい。
「まったくもう! 私は1-Dの川名千花です。あいぷーとは部活でペアを組んでる同中の仲間です」
「はじめまして、東雲沙月です。ずっと自宅療養してたのですが、昨日から復学しました。まだ何もわからないですがよろしくお願いします」
座っての挨拶は失礼かと思って椅子から立ち上がりぺこりとお辞儀をする。
「へーそうなんだぁ。じゃあ、あいぷーといると大変でしょ? この子無駄に元気だから」
「えー、そんな事ないよ〜」
横からあいかさんが応える。そして何故か照れてる……それ貶されてるからね。
「楽しませてもらってますよ」
たしかにあいぷーといると楽しいよね! って同意してくれたので返答に問題なくてほっとした。
「しかし沙月さん、あなた美人だね!」
あー、きたよ、これ。
もう何度目かわからないくらい沢山の人に美人と言われる私。女の子同士って褒める社交辞令が多い文化なのだろうか。
……もううんざりなんですよ、男の私が美人って言われても全然うれしくないし。
こういう時は否定も肯定もせず笑顔を返す。そうすると大半の人は盛りすぎた社交辞令に恥て顔を赤くしてそそくさといなくなる。
ちぃちゃんこと千花さんにも同じように笑顔をくれてやったのだが、千花さんは大半の人達じゃなかった。
「……いい……すごくいい。ねぇ、二年は芸能科に行くの?」
いきなり進級の事聞かれても知識不足でよくわからない。けど、芸能科なんて行ったら平穏な高校生活が遠のくに決まってる。
どう返答しようか悩んでいたら千花さんを呼ぶ声が聞こえた。
呼ぶ声は千花さんのグループの人だったらしく、早く来い。って言ってる。千花さんのグループは私達と少し離れた位置のテーブルを陣取ったようだ。
あいかさんが、ちぃちゃん呼んでるよ。早くいきなー。と言うと名残り惜しそうに私を見て、またね。って言って去っていった。
むむ! 私の危機センサーが反応しかけている、だと!?
「ちぃちゃんってさ、きれいなものに目がないの。人にも適用されたの初めて」
あいかさん、その情報いらないです。危機センサーがばっちり動きましたよ。
私はなんとも言えず苦笑いを浮かべた。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
ストックが切れてしまいました。
出来上がり次第上げさせいただきます。
m(_ _)m
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