第20話 SNSアプリ

 千花さんがいなくなったのでお昼ご飯を再開する。


 ふと気になって、みなさん部活は何されてるんですか? って聞いてみた。


「私はバドミントン部で、こっちの二人がバレー部でこの人が陸上部、あとはバスケ部だよ」


 私の問いにあいかさんが答える。みんな運動部かぁ。道理でお弁当おっきいわけだ。なっとくだわ。


「沙月ちゃんは部活に入るの?」


 前の席に座っている女の子が質問してくる。


「自宅療養が長かったので運動部は難しいです。入部するなら身体に負担がかからない文化部ですけど……部活は強制なのですか?」


「だよねぇ。沙月ちゃん今朝も保健室行ってたから運動部は危ないもんね。部活の強制かぁ。んー、どうだろう? 強制じゃないと思うけど、美里さんなら知ってると思う」


 わかりました。美里さんに会った時にでも確認します。って返事を返す。


 強制じゃなければ部活をするつもりはない。部活なんてすれば、また違う生徒と接点ができてしまう。


 多くの人と関わりができれば出来るほどバレる確率が上がると思う。私は授業が終わったら速攻で帰りたいのだ。


 変に興味を持ってウロウロしたら昨日のように新湖先輩みたいな人に捕まっちゃうかもしれない。


「ところで、沙月ちゃんって"きらピュア"好きなの?」


 違います。って真顔で言ったら、くすくす笑われた。


 挙げ句の果てに沙月ちゃんって美人なのに面白いね。だって。


 美人かどうかはともかく、何が面白いのかわからなくてどこが? って真面目に聞いたらそこが面白いんだって。


 ……まったくわかりません。これはいじめ案件ではないでしょうか。


 そんな事を内心思いながらお弁当を食べてると、沙月ちゃん連絡先交換しよ。って言われた。


 無闇に教えたくないけど、みんなこっちを見てきて断る雰囲気じゃない。


 ダメもとで、私でいいんですか? って聞いたら沙月ちゃんのがいい! って。……はぁ、しょうがない。


 今持ってないから教室戻ったら教えると言ったら、みんなからやった〜! って。


 連絡先を教える事がそんなに嬉しいものなんだね。私ではよくわからないや。


 この後に教える状況になったことで多少の煩わしさを覚えた。



 はい、バチが当たりました。煩わしいと思ったのがだめでした。今とっても煩わしいです。


 初の昼食ミッションをなんとか乗り切り、教室に戻った私を待ち受けていたのは連絡先の交換である。


 ……先に言っておこう。私はスマホの機能を全くと言いっていいほど知らない。というより使えない。スマホを携帯電話と呼ぶくらいなのだから、カンのいい君たちなら察していただろう。


 貧乏時代は通話のみの格安プランでスマホを一台所有していた程度なので知識は皆無に等しい。


 東京にきてすぐに扇木さんからスマホを貸与されて、好きに使っていいよ。って言われたけど、そもそも使い方がわからないし、わざわざこのスマホで電話する相手もいなかった。


 別に無くても困らなかったのでつい最近まで放置状態だった。


 そのツケが回ってきました。交換先を聞かれた私はかばんからスマホを取り出し、電話番号を言おうとしたら、違う! 電話番号もほしいけどそっちじゃない。って。


 私は意味がわからず、どれですか? ってきいたら"いぬスタグラム"とか"ニャいん"だって。


「え? 犬と猫がなんです?」


 そんな事言ったらみんなに笑われた。その後しばらくイジられた後、じゃ交換しよ。って。


 本当に何言ってるかわからない私はどうしていいかわからなく、おろおろ状態に陥った。


 そんな私を見てひとりの女の子が、本当に知らないの? って聞いてきた。


「ごめんなさい。みなさんが言っている犬なんとかと猫なんとかが全然理解できないんです」


 うそ、まじ? ほんと? など口々に言い始める。


「私、自宅療養だったのでスマホを持ってなかったんです。このスマホは最近になって持ち始めたばかりで……すみません」


 ともかくスマホがわからないアピールをする私。


 ……


 ん? この無言の間はなに?


「……沙月ちゃん、笑ったりしてごめんなさい。沙月ちゃんの環境を考えてなくて……ぐずん」


 ちょ、ちょっとぉ、なんで涙目になってるの? そして周りも私達やらかしました的な雰囲気になってるの?


 たしかにスマホ使えないから申し訳ない気持ちで謝ったけど、おかしな空気にしたくて言ったわけじゃないから!


「沙月さん、お昼ご飯食べ終わってたのね。あらっ、みなさんどうしたのかしら?」


 声がした方を見る。


 !! 私の救世主、美里さんが現れた!


 かくかくしかじかと、美里さんに説明する女の子……なるほど。とつぶやくき、皆に向かって一言。


「沙月さんに謝りなさい」


「……ごめんなさい」


「ごめんなさい」


「すみませんでした」


「わっさいびーん」


「すんまへん」


 一同に謝ってきたので、気にしてませんから! 大丈夫ですから! って必死になって宥めた。なんで沖縄語が? と思ってはいけない。そんな雰囲気ではない。


「私が責任をもって使い方を教えてあげるから心配しないで」


 そして美里さんから教えを受ける事になったのが五分前。


「そうそう、そのアイコンを押して……そこに自分の名前を入れて……ちがっ、そこじゃなくて……」


 ……もう嫌です。わかりません。


 数字ならともかく平仮名とか漢字とか文字を押してからスライドしてとか、長押しとか何回も押してから入力とか、初心者殺しですよ、これ。


 とりあえずスマホに"ニャいん"をダウンロードできたのだか、そのあとの初期設定で苦戦している。


 "ニャいん"とはいわゆるコミュニケーションアプリでユーザー同士であれば無料でメッセージのやり取りや音声通話、ビデオ通話ができるアプリ。スマホを持っている大多数が使っている超メジャで有名なんだって。


 そんな事言われても、へーそうなんだ(棒読み)の感想しか抱かない。そもそも今持ってるスマホはつい最近まで埃被っていた状態だったんだから。


 設定が面倒くさくなって、電話での連絡じゃだめですか? って聞いたら"ニャいん"は無料で通話できるからそっちのほうが断然いいよ。って言われた。


 ……なんか求めてた答えと違う。とにかく"ニャいん"の設定が終わらないと開放されないようだ。


 美里さんに見守られながらスマホと格闘すること数分、設定がやっと完了した。


「やったわね。おめでとう」


 美里さんが労いの言葉をかける。


「ありがとうございます。美里さんのおかげて設定できました」


 これでやっとスマホから開放される!


「沙月さんは何でもできそうなイメージだったからびっくりしちゃった。でも面白かったわ」


「できないことの方が沢山ありますよ、私なんかより美里さんのほうが何でもできそうですよ」


「……そんな事ないわ。じゃあ次は私の連絡先を入れてみましょう」


 あれ? 一瞬美里さんの機嫌が下がったような気がしたけど、気のせい?


 美里さんがポケットからスマホを取り出し、私のスマホと美里さんのスマホで何やら操作して完了した。


「うふふ。これでいつでも沙月さんと連絡がとれるわ!」


 すごく喜んでる。私なんかで申し訳ない。


 手に持っていたスマホからピコポンと音がなった。


 なんだろうと思ってスマホを見たら、美里さんからメッセージが届きましたと画面に表示された。


 美里さんを見ると笑顔でこちらを見ている。


 ……美里さん、笑顔のところ誠に申し訳ないけど操作の仕方がわかりません。


なんとも締らない私だった。



--------------


お読みいただきありがとうございます^ ^

沙月はデジタル系に疎いです。



書きたい事は頭にあるのですが、なかなか時間が取れません。

出来上がり次第上げさせいただきます。

m(_ _)m

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る