第31話 スライムマスター……始動

 ニーア街でクザラ商会の一件が終わって一か月が経った。


 ここ一か月でいろいろ進んだ。たとえば、リア姉やソフィは好きなタイミングで屋根裏部屋でスラちゃんと遊んだり、狩りをしたりと、僕と一緒にいるというよりも自分たちがやりたいことをやっている感じだ。


 お父さんはニーア街の領主でもある辺境伯様に呼ばれて、ニーア街に行ったけど、顔色があまりよくなかった。


 みんな楽しい日々を過ごす中、僕はというと――――もちろん! 大きく進化した!


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スキル:

魔力操作=99998/99999

スライムテイマー=49998/49999

激励=21644/99999

危機感知=121/99999

威圧耐性=972/9999

魔力回復=9998/9999

脱力=9998/9999


天啓=コンプリート

進化=コンプリート

疾風迅雷=コンプリート

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 まず、スキル『応援』が『激励』に進化した。それによって、スキルの得られる経験値量が爆増した。『応援』というスキルはやはり成長を手助けしてくれるスキルで、スラちゃんを通してもかけられる。ソフィが勉強を教えている子どもたちにも応援をかけてあげたら、人数も相まって僕のスキルもメキメキ成長して進化した。


 『激励』は『応援』のただの強化版だ。


 そして――――今日たくさんスキルマックスになる!


「セシル~今日だよね?」「お兄ちゃん~今日だよね?」


 あはは……仲がいいのか悪いのか。二人の間に火花が散る。


「これからだよ~


 いつもの定位置。僕の右手にはソフィ、左手にはリア姉が抱きついてくる。


 二人と一緒に向かうのは――――村の東にある森。


 森に入ってすぐに『魔力操作』『スライムテイマー』『魔力回復』『脱力』が最大値となった。


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スキル:

魔力回復=コンプリート

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 魔力回復は進化しないようだ。


 さっそく残り三つのスキルにスキル『進化』を使って進化させる。


 ――――【スキル『進化』により、スキル『脱力』が『衰弱』に進化しました。】



 衰……弱? これって名前的に…………悪魔みたいなスキルってことだよね!?


 ――――【スキル『進化』により、スキル『魔力操作』が『魔力支配』に進化しました。】


 魔力支配……?


 それと同時に、僕と繋がっている全ての存在の『魔力』そのものが――――一つになる・・・・・感覚に陥った。


 今までは僕とスラちゃんで魔力の糸みたいなものを繋いで、必要なときに僕の魔力を送っていた。


 それが魔力の糸も全て消えて、僕とスラちゃんたちがまるで一体化したかのように繋がった。


 これで僕の魔力はスラちゃんの魔力となり、スラちゃんの魔力は僕の魔力となる。僕の魔力の中に多くのスラちゃんたちの魔力が入り混じった。


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レベル:0/0

才能:無

魔力:999999+15000

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 ステータス画面にも魔力が追加されるようになった。スライムたちの魔力だ。


「あ……れ?」


 操作から支配に変わり、周囲の魔力が見えるようになった。


 可愛らしく首を傾げるリア姉とソフィからの魔力も見える。


「お兄ちゃん? どうしたの?」


「魔力操作が進化したら支配というのになって、二人の魔力も見えるようになったんだ」


「ほえ~」


 僕はおもむろに手を伸ばしてソフィの魔力に触れてみる。


「ひゃん!?」


「ぬわっ!? ご、ごめん!」


「お、お兄ちゃん……? いまのって……?」


 魔力支配と答えるよりも前に、ソフィに触れて離した手を鷲掴みするリア姉の手。


「セシル。私にも」


「え……?」


「私にもしてちょうだい!」


「?」


 とりあえず、言われた通りにリア姉の魔力にも触れてみる。


「ひやん!?」


「ぬわっ!? リ、リア姉? 大丈夫?」


 その場に座り込んで、荒い息を吐くリア姉。


 今度はソフィの手が僕の手を握りしめる。


「お兄ちゃん! 私ももう一回!」


「…………二人とも? 落ち着こう?」


「「やだ!」」


 …………。


 頑固な二人に逆らわず、言われるがままに二人の頭を撫でながら魔力に触れてあげた。


 どうして魔力に触れるだけで、そんな悶える声を出すのか……。


 段々慣れてくると、リア姉とソフィの魔力を自由自在に操作できるようになった。


「これで……私の魔力はセシルのものね」


「お兄ちゃん? 私の魔力はお兄ちゃんのものだからね?」


 魔力操作のときはスラちゃんたちとしか糸を繋げられなかったけど、魔力支配で魔力に触れると人とも魔力を共有させることができるようになった。


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レベル:0/0

才能:無

魔力:999999+20000

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 才能『教皇』と『賢者』である二人の魔力は2500。二人もスラちゃんの分も上乗せされた。


「お兄ちゃんの魔力……やっぱりこんなにすごかったんだね」


「私の中に……セシルの魔力が……」


 …………二人とも目がハートになっている気がするけど、見なかったことにしよう。


 次は最後のスキルを進化させる。


 ――――【スキル『進化』により、スキル『スライムテイマー』が『スライムマスター』に進化しました。】


 それと同時にスラちゃんたちがブルブルっと震え始める。


『ご、ご主人様…………ち、力が……』


「スラちゃんたち!?」


 みんな力が抜けたように、破けた風船のようにぷにゅっとなった。


「スラちゃああああああん!!」


 スラちゃんたちの体が波打ち始める。


 とても不思議な光景だけど、スラちゃんたちが心配で仕方がない。


 一分ほど波打ったスラちゃんの体は――――布が丸まるようにゴルフボールの大きさになった。そして――――全身から虹色の光を輝かせる。


『スラちゃん~進化~!』


 ぴょ~んと音を立てて、全てのスラちゃんたちが空高く跳び上がった。


『ご主人様~! 僕たち~ちゃんと進化したよ~!』


 そう話すスラちゃんたちは、空高く跳び上がったまま――――降りてこない。


「ええええ!? スラちゃんたち!? 空も飛べるようになったの!?」


『そうだよ~』


 スラちゃんたちは地面を滑るように動いていたように、今度は空を飛び回りながら僕たちの上を飛び回った。


 けれど、驚くのはこんなところじゃなかった。


 まだ熟練度が1の『スライムマスター』の熟練度が上昇することで、まさかスラちゃんたちにあんなことが起きるなんて、このときの僕は知る由もなかった。


 それから数日。進化したスラちゃんたちは、一匹ずつがものすごく強くなったことがわかった。一匹でも――――オークが余裕で倒せるほどまでに。


 それによって一番の問題だった死の道に生息するオーク討伐が現実味を帯びてきた。


 さらに、スラちゃんたちが飛べることで、僕はとあることを画策するのであった。


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スキル:

スライムマスター=1847/49999

激励=27015/99999

危機感知=121/99999

威圧耐性=972/9999

衰弱=461/9999


魔力回復=コンプリート

魔力支配=コンプリート

天啓=コンプリート

進化=コンプリート

疾風迅雷=コンプリート

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