第29話 〇〇を授けます
空高く掲げられたスラちゃんから溢れんばかり出ている光。
これは僕が出しているのではなく、リア姉の祈りによるものだ。
実際のリア姉の体からはこれほど目に見えて溢れたりはしないんだけど、僕を通してスラちゃんからだとどんでもない勢いで溢れる。しかも、光は少しずつ霧みたいになって礼拝堂が光り輝くキラキラした霧で充満するようになった。
そのとき、祭壇で鋭い眼光を向けていた大司教が声を上げた。
「お、おぉ…………女神様じゃ! 女神様が降臨なされたのじゃああああ!」
…………おじいちゃん。酔ってるのかな?
だって、どこからどうみても光ってるスライムなだけなのに、それに向かって跪き祈り始めた。
まあ、うちのリア姉が女神なのは事実なんだけど!
僕の右手を握っているソフィの手に力が入る。ものすごい怖い表情で僕を見上げていた。
「大司教アルウィン」
「おおお! わたくしめなんかの名前を……」
「私は――――悲しんでおります」
「!?」
「教会の三原則を覚えておりますか?」
「も、もちろんでございます! 力ある者は弱き者を助ける! 困った隣人には手を差し伸べてお互いに支え合う! 日々生きることに感謝しながら生きる! でございます!」
気のせいかな……? さっきまでどこか怠そうにしていたのに、めちゃ元気になってる気がする。
「では大司教アルウィン。貴方はリーア街で最も模範になるべき存在なのに、それを――――
「!? そ、それは……」
「さあ、光の中で懺悔なさい」
「は、はい!」
ものすごい勢いで大泣きしながら鼻水を垂らしながら、大司教は今まで自分が行った怠惰なことを告白し続けた。
大司教だけじゃない。その場に集まっていた住民たちも全員が跪き、祈りを捧げながら懺悔を始める。
みんな一斉に懺悔しているから誰がどんな悪事を行ったのか全然聞き取れない。まあ、近かった大司教だけが権力に目がくらみ、見て見ぬふりをしたり、嘘の裁判をしたりと悪事を繰り返していたことを告白した。
「さあ。皆さん。頭を上げてください」
懺悔の声が響き渡っていた礼拝堂が一斉に静かになり、みんなが涙に濡れた目でスラちゃんに注目する。
「私は――――貴方たちを許します」
「「「「女神様ああああああ」」」」
「これからは隣人を助け、弱き者にも手を差し伸べながら余裕のある生活を送るようにしてください」
「「「「はい!」」」」
「それでは、
え? 天啓……?
「――――僕は悪いスライムじゃないよ~」
「「「「僕は悪いスライムじゃないよ~」」」」
「――――うちのセシル、可愛い~」
「「「「うちのセシル、可愛い~」」」」
リア姉!?
「これで天啓は終わります。スライムたちを受け入れて生活しなさい」
「「「「はいっ!」」」」
直後、スラちゃんから光が消えるとともに、礼拝堂には割れんばかりの歓声が上がった。
そんな中、お父さんとおじさんだけが腹を抱えて笑っている姿が見える。
「リア姉!? どうして僕!?」
「え? だって――――当然のことを言っただけだよ? ね? ソフィちゃん」
「そうね! 間違いないわ! ね?」
キリッとした視線がノア兄さんたちに向けられる。
三人ともに一瞬ブルッと震えた後、「うん! そうだね! うちのセシル、可愛い~」と寸分たがわぬタイミングで合唱した。
さすがは日々を伴にする兄弟だね……。
「ね? お母さん」
「当然よね~!」
最後にお母さんが後ろから僕を抱きしめる。
背中にスラちゃんを感じる。
ん……? スラちゃん?
…………。
…………。
リア姉とソフィがまるでおぞましいものでも見ているかのような視線を僕に向けていたけど、僕にはとても見えないのでスクリーンに集中した。
スクリーンの中では大勢の知らない人たちが「セシル~! セシル~!」と大声を上げながら盛り上がっていた。
それからの動きは早かった。大司教アルウィンは自ら罰と称し――――ものすごくアクティブに善意行為をするようになった。
今までクザラ商会によって嫌がらせにあった人々や商会に全力援助が始まる。
クザラ商会の全財産は王国によって没収されたけど、大司教アルウィンによって全て援助に回すことになった。
王国内でも大司教は二人しかいないので、ものすごい権力を持っているし、彼の弟子が現在の教皇と枢機卿が一人いるみたい。
ソフィがスクリーン前で腕を組み、ドヤ顔しながら見つめる。
「ウィン! よくやったわ~」
「ははっ! ありがたき幸せ!」
頭の上に乗っているスラちゃんが可愛らしい手を伸ばしてぽよん~と優しく大司教の頭を叩く。
「次は孤児院ね! 例の件は進めてくれたかしら?」
「ははっ! 王国南部にいる全ての孤児院を統合し、一か所に集まってもらいました!」
「偉いわ!」
「嬉しゅうございます!」
「これから孤児院の配給を三倍に増やすのよ!」
「かしこまりました!」
「これも全て――――
「ありがたき幸せ……! セシル様のお言葉をちょうだいできるなんて……!」
「お
「おおおお!」
「子どもは人類の未来である! 彼らを育てることこそが人類が明るくなる方法である! それはやがて力となり、我々を守る力ともなるであろう!」
「おおおお! まさにその通りでございます! これから子どもを大事にするように触れ回ります!」
「当然ね! もちろん孤児だけじゃないわ。両親が忙しくて寂しくしている子どもたちも、貧しい家に生まれた子どもたちも、みんな腹いっぱいに食べさせて、字を教え、算数を教えるのよ~!」
「ははっ! ――――ソフィ様」
「うん?」
「その、算数ってなんでございましょう?」
「うむ! 算数は私が教えるから問題ないの!」
「ははっ! 子どもたちは幸せ者ですな~ソフィ様の恩恵にあずかれるなんて!」
「そんなことないわ! 私よりセシル様に感謝なさい!」
「ははっ! セシル様。いつも我々を見守ってくださりありがとうございます!」
…………僕はたった一言、「ご飯を食べれない子どもがいるの? 可哀想だね……なんとかしてあげたいな」と言っただけで、リア姉とソフィによってどんどん改革が進んだ。
…………どうしてこうなった!
――――【スキル『天啓』を獲得しました。】
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スキル:
魔力操作=60112/99999
スライムテイマー=13339/49999
応援=91076/99999
危機感知=121/99999
威圧耐性=972/9999
魔力回復=1489/9999
脱力=777/9999
天啓=コンプリート
進化=コンプリート
疾風迅雷=コンプリート
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