第26話 空から……降ってきたモノ!?

「くくくく~私たちは悪い大人たちだ~」


「悪い子はいねぇかぁ~」


 リア姉とソフィがスクリーンに合わせてアフレコ・・・・を始める。


 それに合わせてお母さんと兄さんたちで大笑いをする。


 スクリーンに映っているのはそりゃ悪そうな顔のおっさん。悪の親玉みたいな人。


 彼らは――――おじさんの店を邪魔した犯人であり、お父さんをずっと食い物にしていた者たちでもある。


「くっくっくっ。あの男はどうだった?」


「間抜けな表情をしてましたね。これも全部クザラ様に逆らった罰というものです」


「がーはははっ! あのクズが騎士団長だった頃に俺様に立てついたからな」


「そうですとも! あの嫁はもったいなかったですけど、結果的には……」


「ああ。本当にもったいないことになった。あのまま――――」


 お母さんから絶大な無言の圧力により、スラちゃんの表情が一瞬で凍り付いて声が聞こえなくなった。


「うん? スラちゃん? どうしたの?」


『な、何でもないぽよ~』


「そっか。変なスラちゃん~」


「それにしてもクザラ商会……いろいろ酷いことをしたみたいだわ」


 震えていたスラちゃんが、少し穏やかな表情になってまたスクリーンの声を届けてくれる。


「クザラ様。あの田舎村はどうします?」


「変な若造の村か」


 変な若造って言葉でまたスラちゃんが震えあがる。


 ちらっと後ろを見ると、お母さんから一瞬だけ黒い靄みたいなのが出ていた。


「うん? セシルちゃん? どうしたの?」


「な、なんでもないよ!」


 僕は何も知りません! 何も見ていません!


「どうせアネモネ商会が潰れたら泣きついてくるだろう。そのときには今までの三倍吹っ掛けてやれ!」


「かしこまりました。くっくっくっ。あの若造も自分の立場を理解するはずです」


「うむ。ただが辺境地領主の分際で我が商会を拒むとは……後悔させてやるぞ!」


 悪い男二人は卑しい笑い声を上げた。




 ――――そのとき。




 ドーンと大きな音が響いて、建物丸ごと大きく揺れた。


「な、何事だ!」


 扉が乱暴に開いて慌てた様子の大柄の男が入ってきた。


「クザラ様! 大変です! そ、空から――――スライムが落ちてきました!」


「……は?」


「スライムが落ちてきたんです!」


「スライム如きになんでこうなるんだ!」


「それが普通のスライムじゃないんです!」


 舌打ちをしたクザラは部屋から急いで外に出た。


 そこで待っていたのは――――


「「「「なんじゃこりゃあああああ!」」」」


 クザラたちの前に立ちはだかるのは――――可愛らしいボディとつぶらな瞳がキュートな……超巨大スライムが見えた。


 どれくらい大きいかというと、五階建ての建物が点在するニーア街でも建物の上にスライムの体が見えるほどには大きい。


 そして――――




「僕は~悪い~スライムじゃ~ないよおおお~!」




 ニーア街に僕の声が鳴り響く。


 そう! このスライムは当然、僕の従魔となったスライムたちだ。


 一匹では大きくなっても大人くらいの大きさにしかなれないスラちゃんたちだったが――――なんと! 魔力操作のポイントが5万を突破したら、キングスライムに合体できるようになったのだ!


 スラちゃんたちは、意志は共有しているし、それぞれ個体には僕の魔力操作の糸が全員繋がっているのもあって、意思疎通によるキングスライム合体に成功したのだ!


「「「「スライムが喋ったあああああ!」」」」


「ここに~悪い~人たちが~住んでると~聞いて~きたの~」


 今度はソフィが喋る。うん。可愛い。


 大騒ぎとなって何人もの人が集まる。


 さらに建物を守っていた人たちがスラちゃんを攻撃するのだが、魔法も剣も矢もどれも効かない。


 スラちゃんたちが合体して大きくなっただけなら、これだけの多くの攻撃にやられていたかもしれない。でも、キングスライムとなったスラちゃんたちは、一気に強力な魔物へと変貌した。


 見た目通りの強さになるというか、速度がとんでもなく遅くなった。と言っても大きいのでひとっ飛びの距離が結構長いけどね。次に強化されたのは、防御力。魔法に対する耐性もさることながら物理攻撃を跳ね返す・・・・力が凄まじく、矢が飛んできても、「ぷよん~」と音を立てて刺さることなく地面に落ちていく。剣による攻撃も、斬り付けても跳ね返ってしまうと、あのお父さんまでもが溜息をつくほどだった。


「罪を~告白~しなさい~!」


 リア姉の神々しい声が街に鳴り響く。リア姉の声って不思議と心が揺さぶられるのよね。きっと才能のせいなんだろうね。


 城からも兵士さんたちがやってくるのが見えるけど、だいぶ遠いので時間がかかりそうだ。


「クザラ商会は~悪いことを~いっぱい~やっているんだな~罰だな~」


「なんだこの、異様に力が抜ける声は!」


 失敬な! 僕の声は力が抜ける声じゃないよ!


 ――――【スキル『脱力』を獲得しました。】


 …………。


「クザラ商会~これまでの悪さを全部暴くぞ~!」


 それと同時に――――とある兵士たちがクザラ商会に乗り込んだ。


「王国軍だ! クザラ商会に王国法違反の疑いがある! 調べさせてもらうぞ!」


 美しい金色の髪がなびいて、凛々しい声がクザラ商会の前に広がる。


「あらやだ~あの人ったら…………かっこいいわ~」


 お母さん? ここは頬を赤くする場面ではないと思うよ?


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スキル:

魔力操作=52581/99999

スライムテイマー=10091/49999

応援=78571/99999

危機感知=121/99999

威圧耐性=972/9999

魔力回復=1046/9999

脱力=1/9999


進化=コンプリート

疾風迅雷=コンプリート

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