第24話 自由市場……開店!
しばらく広場で兵士さんと喋っていると、おじさんが出てきた。
「おじさん~」
「よ。待たせたな。ずいぶんと仲良くなったみたいだな?」
スラちゃんたちと抱きかかえて微笑んでいる兵士さんたちを見て、おじさんとおじさんの知り合いの兵士さんが苦笑いを浮かべた。
「お前ら……見張れって言ったのに……」
「も、申し訳ございません!」
残念そうにスラちゃんたちを地面に置いた兵士さんたちが離れて整列する。
いつも笑顔のスラちゃんが兵士さんたちを恋しそうに眺める様は、ご主人様から下ろされたペットそのものだ。
うちのスラちゃんたちは村民たちとのふれあいも多くて、人懐っこいのがいいとこだね!
「おじさん? これからどうするの?」
「盗賊たちは引き渡したから、俺たちは予定通りにいくぞ」
「は~い。市場にいくんだよね?」
「ああ。ウェンダ。またな」
「はい。いつでも困ったことがあったら、俺を訪ねてください。オルタ様」
「様はよせ……俺はただの商人だぞ」
「そういうことにしておきます」
残念そうにしている兵士さんたちに手を振って城をあとにする。スラちゃんたちが手のように体を少し伸ばして手を振る姿がものすごく愛くるしい。
後ろで一緒に観ていたリア姉をソフィはすぐに屋根裏部屋に一緒にいるスラちゃんに真似をさせていた。
うん。スクリーンを通した姿も実物もめちゃくちゃ可愛い!
「おじさんって偉い人だったの?」
「……昔ちょっとな。忘れていいぞ」
「忘れません~」
「ちっ…………」
「マイルちゃんは知ってるの?」
「いや。知らない」
「そっか。じゃあ、貸し一つね~」
「お前、本当に六歳児なんだよな!?」
「そうだよ? 会いにくる?」
「誰が死の道を通るかよ!」
「やっぱりあそこって大変なんだ?」
「当然だ。スモールボアという食べやすくて狩りやすい魔物が繁殖しているが……オークどもの森を越えないといけないからな」
「オークがいなかったら気軽に来れるのかな~?」
「そりゃな。まあ、それよりもいまは商品を売ることだな」
「そうだね~」
城からまたずいぶんと長い大通りを歩く。
スラちゃんたちの大行進を相変わらず見守る人たちが多い。
大通りを進んで現れたのは――――数えきれない人が集まっている市場だった。
商品を売る人、ほしいものを探している人、ただ気兼ねなく眺めている人、値段を調べている人、いろいろな人がいて、圧倒的な人の波が目の前を埋め尽くした。
「すげぇ~!!」
「くっくっ。王国でも有数の市場はすごいか?」
「はい! ものすごいですよ! こんなに人が多いって、想像もしたことなかったです!」
「村から外に出たことないんだったな?」
「そうなんですよ。マイルちゃんもここは見たことないんですよね?」
「おう。うちのマイルにもいずれ見せたいとは思ってるさ。さて、場所を探すか」
「場所って自由に決められるんでしたっけ」
「おう。自由市場だからな。ここでなら決められた場所内で自由に商売できるのさ。ただ、王国法に乗っ取ったものならな」
自由市場というのはとても面白いシステムだ。普通こういう王国だと土地を高額で貸して、多額の税を取るはずなのに、それを開放して誰でも使えるようにしてるのはすごい。
それに自由市場ならではのルールもあるようで、商売をしていた商人がまだ商品があるのにも関わらず店を畳んで離れ、また新しい商人が店を開く姿が見えた。
自由市場の脇に建てられている五階もある立派な建物の中に入ると、受付みたいになっていておじさんが慣れた手付きで受付を済ませた。どうやら管理組合みたい。
受付は前世同様にみんな可愛らしいお姉ちゃんたちばかりで、彼女たちの視線が
「今日は運がいいな。あまり待たずに店を開けそうだ」
「それはよかった~」
三十分くらい市場を見学して、こじんまりとしたスペースに行き、自由市場管理組合の人と話してから店を開くことにした。
「おじさん。ほい~」
「おう。ありがとうよ」
屋根付き売場の内側にスラちゃんたちが持ってきた荷物を積み重ねて、百匹はいるスラちゃんたちを小さくして荷物番をさせながら、店の陳列も手伝う。
「スモールボア干し肉、一切れ銅貨一枚~!」
おじさんは大きな声で宣伝しながら、白板に炭ペンで値段を書いて掲示した。
異世界の貨幣は、どの国も統一しており、教会が管理しているという。貨幣は小銅貨が10円相当で、その10枚と同等が銅貨1枚で100円相当。小銀貨は銅貨10枚で1,000円相当。銀貨は小銀貨10枚で10,000円相当。その上には金貨が存在していて、一枚で1,000,000円相当なのもあって、大口取引でしか見られない。
基本的には小銅貨(10円)、銅貨(100円)、小銀貨(1,000円)が主流だ。
それから約一時間。
売り出して驚くくらい――――まったく売れなかった。
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