第21話 無精ひげおっさんは……撫でるのが苦手
お父さんがアデランス町から帰ってきて三日後。
今日も今日とてスラちゃんたちにご飯をあげる。ただし、ご飯を上げるのも進化した。
赤ちゃんの頃から暇さえあればやっていた『魔力操作』。スキルを獲得したのは五歳の時だけど、自由自在に操作できたし、いまでは声を伝えるくらいには操作できるようになった。
ならばっ! それを使っていつもご飯をあげている魔力を魔力操作で作った糸で渡してみたら――――なんと! 大成功だった! 何千匹もいるスラちゃんたちに広範囲とはいえご飯をあげるのは、長い時間が必要だったけど、これなら一瞬で終わるね!
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スキル:
魔力操作=39013/99999
スライムテイマー=8841/49999
応援=56106/99999
危機感知=121/99999
威圧耐性=972/9999
魔力回復=799/9999
進化=コンプリート
疾風迅雷=コンプリート
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魔力操作が劇的に上昇した。一年間上げたものが、たった数日で上がってしまうなんてね……。
「セシル~♪」「お兄~ちゃん♪」
「ふ、二人とも……? どうしたのかな?」
「うふふ。これからまたスクリーン観るのぉ?」「のぉ?」
「え、えっと…………念のために? スラちゃんたちも心配だし」
「それってスラちゃんたちのために?」「ために?」
「あ、あはは…………い、一応、アデランス町とか外のこととかいろいろ聞きたいし」
「「ふう~ん」」
「もしよかったら二人も一緒に観る?」
「「う~ん!」」
最後だけ満面の笑みなのよな……。
「セシル? 何か不満でもあるの?」
「いえっ! ありません! 姉上!」
「じゃあ、私たちは紅茶とお菓子を持って部屋に行くね~?」
リア姉とソフィと別れて、僕だけ先に屋根裏部屋に入ってスクリーンを起動させた。
「マイルちゃん。おはよう~」
「セシルくん~おはよう!」
こちらに向かって手を振る。リア姉とソフィは異世界超絶美少女で、どこか美しい彫刻のような神々しさがある。マイルちゃんは町の娘らしいというか、赤に近い茶色の髪を一つに纏めてポニーテールにしているし、可愛いというよりは普通という印象がある。でも店員として身だしなみは綺麗に整えているので、とても好印象だ。
「今日はよろしくね。セシルくん」
「うん。任せて! 僕じゃなくスラちゃんたちだけど」
「ふふっ。でもセシルくんが頼んでくれるからね~いつも手伝ってくれてありがとうね!」
「僕もいろいろ話が聞けるから助かるよ~」
後ろからリア姉とソフィが静かに入ってくる。
「「…………」」
目を見ちゃダメだ。目を見ちゃダメだ。目を見ちゃダメだ。
「セシルくん?」
「マイルちゃん! さっそく仕事に取り掛かろう~!」
「うん? お~!」
一瞬ポカンとしたマイルちゃんが可愛らしく右拳を上げて気合を入れた。
マイルちゃんを先頭にスラちゃん百匹とともに向かうのは、子猪肉を預けたお肉屋さん。
我が物顔で中に入ると、店主のごっついおっさんと、もう一人の無精ひげの若いおっさんがいた。
「マイル。干し肉は完成したぞ」
「は~い」
タタタッと小走りでおっさんの隣にたって見上げるマイルちゃん。その表情はとても柔らかいものだ。
おっさんも少し口元を崩してマイルちゃんの頭を乱暴に撫でてあげる。
綺麗に纏めていた髪がボサボサになった。
「父ちゃん~今回の買取は全部セシルくんにお願いするからね? 父ちゃんがしちゃダメだからね?」
「ちっ……お、俺だって!」
「ダメ。父ちゃんすぐに怒るから良い商談全部なくなるから」
「ちげぇんだよ。あいつらが足元を見てるのが悪いんだ!」
「知ってるってば。だからこそダメよ。今回はセシルくんに任せてね? 約束ね?」
「…………おい。小僧」
おっさんの視線が
「は~い」
「くっ……相変わらずのんきな声だな。今回はマイルの顔を立ててお前に任せてやるから、しっかり働いてくれ!」
「父ちゃん! そんな言い方しないでってば!」
「ふん!」
あはは……マイルちゃんのお父さん。アネモネ商会の会頭でもある。まぁ、商会の切り盛りは実は全部マイルちゃんがしてるけどね。五歳の時からずっとやってて、二年経った今では、そこら辺の店員よりずっと交渉上手なんだよね。
「おじさん~よろしく~」
「ったく……気が抜けてしまうぜ」
不満を言いながら干し肉を鞄に入れてスラちゃんたちに乗せ始めた。
一匹の上に乗せると、もう一匹がさらに上に乗り、鞄を挟む形でスラちゃんタワーになる。
これで何があっても荷物がなくなることはない。雨でも水の中でも濡れることがないのは、ものすごい利点だ。
スラちゃんたちは重さがほぼないので、二匹がタワーになっても下の子はなんの負担もない。
「行くぞ!」
「マイルちゃん、行ってくるね~」
「いってらっしゃい! セシルくん、父ちゃんをお願いね~」
「俺は子どもじゃね!」
「任された~」
こうして、僕の
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