第15話 セシルの……悪だくみ!?

 数日後。


「セシル」


「あいっ!」


「…………ちゃんとお留守番するんだぞ?」


「あいっ!」


「…………やけに言うことをちゃんと聞くな?」


「やだな~僕がなにかトラブルメーカーみたいな言い方だよ? お父さん」


「…………」


 お父さんはポンと優しく僕の頭を叩いた。


「村を任せたぞ。それにしても、今回の旅は……壮観だな。スラちゃんたち! 決して勝手に動かないようにな! とくに町で!」


『『『『は~い!』』』』


 いつも通り馬を使った馬車で向かう。前世とそう変わらない馬だけど、前世より丈夫そうな馬。


 バイコーンはどうやら飼うのが大変らしくてうちの村では飼っていない。


 今回も馬二頭が引く馬車。今までと違うのはスラちゃんたちが大量に乗っていることだ。


 体を小さくして百匹は乗っている。スラちゃんたちの質量だけど、意外なことに重さを一切感じない。これはスライムの特性らしくて全身に大量のスラちゃんたちがくっついても全く重くない。


「スラちゃんたち~お父さんの話は~ちゃんと聞くんだよ~」


『『『『『は~い!』』』』』


「…………」


 お父さん? そんな怪しげな視線を向けないで?


 今までよりも多くの子猪肉を乗せた馬車が離れていくのをお母さんたちとみんなで見守った。


 見送りが終わって、みんなそれぞれいつものことをやり始める。


 さっそく僕がきたのは――――


「ノア兄さん!」


「うん? セシルくんがここにくるなんて、珍しいね?」


「そうだね~」


 決して兄さんたちと仲が悪いわけではないけど、リア姉とソフィと一緒に過ごす時間の方が圧倒的に多いからね。


 最近でこそ、スラちゃんたちのご飯とかをあげてたから、兄さんたちと遊んだりはしてできてないし、兄さんたちもお父さんを見習って立派な騎士になりたいと毎日稽古を頑張っていた。


 僕はまだ前世の記憶があるからわかるけど、兄さんたちはまだ十歳九歳八歳なのにも関わらず、将来の目標をしっかり持っているのがすごいと思う。これもお父さんの背中を見て育ったからなんだろうね。


「セシルくんも稽古する?」


「う~ん。稽古もしてみたいけど、今日きたのはそれじゃなくて、もっと重大なことがあるからなんだ」


「「「重大なこと?」」」


 オーウェン兄さんとジャック兄さんも気になるみたいで、僕に注目した。


「これからすごいことをするんだけど、兄さんたちも来ない?」


「俺たちも? ――――もしかして、また悪だくみ?」


「お父さんもそうだったけど、僕はそんなトラブルメーカーじゃないよ!」


 すると兄さんたちが一斉に大声で笑った。


「あはは、冗談さ。それでどんなことするの?」


「えっとね。ここではちょっとできなくて……秘密基地に行こう!」


「「「秘密基地!?」」」


「うん! こっちだよ~!」


 兄さんたちを連れてリア姉とソフィとスラちゃんたちと共に向かうのは――――うちの家の屋根裏だ。ただし、屋根裏は外からしか入れなくて、そこまで上がるのに梯子が必要だけど、今はスラちゃんに乗って簡単に入れる。


「いつの間に屋根裏部屋をこんなに綺麗にしたんだ!?」


「ふっふっふっ。お父さんたちが町に向かうって知ってからね~!」


「ほら、やっぱり悪だくみ」


「ち、違うよ! それにお父さんたちの邪魔にはならないはずだから」


 屋根裏部屋は、これから行うことのために誰にも邪魔されないために作った秘密基地だ。


 できれば木の上とかに秘密基地を作ってみたいけど、村の周囲は魔物がいるから、スラちゃんたちに護衛をさせないといけなくなっちゃうからね。


 リア姉に教わった屋根裏部屋を秘密基地にすることに決めて、スラちゃんたちとリア姉とソフィと一所懸命に掃除をしたのだ。


 さらにスラちゃんに頼んで木材を使って長いベンチ椅子を作ってもらい、そこにふかふかになるように葉っぱを詰めてソファのようにした。


 ちょっとだけ不格好だけど、リア姉とソフィと一緒に作った長椅子ソファで、僕達兄妹六人が座ってもまだ足りるくらいに長い。


「こんな長い椅子で何をするんだ?」


「それはこれからのお楽しみ!」


 実は僕もワクワクしている。事前に体験はしたけど、これからが本番だと思うとワクワクしてたまらない。


 みんなで長椅子ソファに座ると、目の前は壁に向いている。


 前に置かれたテーブルの上に一匹のスラちゃんが乗る。


「スラちゃん……! いいよ!」


『あいあいさ~! それじゃ~やります~!』


 ブルブルっと震えたスラちゃん。


『スライムスキル~! 視界共有~! そして~視界投影っ~!』


 次の瞬間、スラちゃんの上に大きな画面が現れる。そう。画面。まるでステータス画面にも似たそれは、前世でも見たホログラムを映す画面そのものだ。


「変なのが出た!」


 僕とスラちゃんが繋がってる糸のようなものを通して、大量の魔力が吸い込まれ始める。


 すると画面に――――とある景色が映った。


「お父さんだ!」


 ジャック兄さんが驚いた通り、画面には村から離れたはずのお父さんが映った。


「えっへん! これはセシルお兄ちゃんだからできるスラちゃんを使った遠くを見る魔法なんだよ!」


「「「すごい~!」」」


 こう、テレビを始めてみた子どものように興奮するノア兄さんたち。うんうん。初々しくていいね。


 自慢げにドヤ顔しているけど、ソフィだって最初は興奮しすぎてその場で飛び跳ねてたからね。


 リア姉に関しては、興奮をあらぬ方向に進んで、何故か泣いていた。


 そんな興奮状態の僕たちだったが、気付かないうちに後ろから忍び寄る魔の手(?)があった。

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