第14話 次の目標は……外!?
『騎士』
自らのけ――――――――え? このくだり前にも聞いたって?
ごほん。
とある村では人々がバイコーンよりも速く走れる――――スライムに乗るらしい!
「領主様! 本日の見回りも異常はありませんでした!」
「うむ。ご苦労」
「はっ!」
うちの村には村を守る衛兵さんが何人かいる。
みなさんから聞いたのは、お父さんは実はめちゃくちゃ強いらしい。村では一番強いという。
たしかに、あの禍々しい巨大猪をボコボコにしてたし、ノア兄さんたちとの稽古を見ててもわかるからね。
そんな衛兵さんたちは白い革で作られたライトアーマーっぽい鎧を着て、腰には分厚い剣が下げられている。
彼らを見るだけでかっこよくて騎士に憧れるのもわかる。
うん。
わかるんだけど…………。
…………。
『わ~ご主人様~!』
『わ~い~!』
彼らが
スラちゃんたちが進化して体の大きさをわりと自由に変えられるようになって、小さいと野球ボールくらいから、大きくなると二メートルくらいになるので僕の体の数倍大きくなる。高さだけでも大きいのにまん丸だから最大サイズだと中々……。
そんなスラちゃんたちは一メートルくらいのサイズになって大人たちを乗せている。
今では村民全てにかならず一匹以上のスラちゃんが付くようにしている。
護衛も兼ねているし、言葉もわかるので乗り物(?)としても重宝している。
お父さんに敬礼した衛兵さんが離れていく。
「ん? セシル。どうかしたのか?」
「なんでもないよ~」
お父さん……めちゃイケメンでかっこいいのに……スライムに乗ってるとちょっと不格好というか、可愛いというか、今までのイメージと違うというか。
村中にスラちゃんに乗った村民が笑顔で通り抜けていく。みんなだいぶ慣れたんだな。
家からスラちゃんに乗ったお母さんとリア姉とソフィはやってくる。
三匹のスラちゃんがくっついて同時に動くのは、サイドが付いているバイクのように見える。
しかもリア姉とソフィはお母さんそっくりなので、すごく神秘的だ。可愛いスラちゃんも似合ってる。
「ノアくんたちは~?」
「ノアたちはスラちゃんたちと鬼ごっこに向かったよ」
鬼ごっこは遊びに聞こえるけど、全然そんなことなくて、素早いスラちゃんたちを捕まえる訓練だけど、速すぎてノア兄さんたちはかなり苦労している様子だ。
「貴方~? 塩をそろそろ買わないといけなさそうよ」
「もうそんな時期か……」
……キタ! ついに
「あいっ!」
僕は全力で手を上げた。
「「ダメ」」
まだ何も言ってないんですけど!?
「「あいっ! 私たちも!」」
「「もっとダメ!」」
「「「え~」」」
「本当にダメだからね!?」
「「「…………」」」
うちの村は商人が訪れてくるわけじゃないので、定期的に北にある町に買い出しに行っている。
お母さん曰く、向かうのも大変らしくて、お父さんが率いる馬車で行ってくるのだ。
その間は防衛も薄くなるので、みんなピリピリしていたのを毎年見ていた。
「君たちはまだ五歳六歳七歳だからね!?」
「「「え~」」」
「え~じゃないっ! ダメったら絶対ダメ!」
「「「むう……」」」
さすがにお父さんお母さんを本気で怒らせるわけにもいかず、諦めた。
――――と思ったけど、何とかならないかなと悩んでいる。
最近はもはや当たり前のように一緒に寝ているリア姉とソフィ。
まだ大きめのベッドなので僕達三人が川の字になっても問題ない。
『ご主人様? どうしたの~?』
難しい顔をしていたからそれが気になったのかな?
「ううん。スラちゃんたちのことじゃないよ?」
『そっか……私たちが力になれることは頑張るよ!』
「そっか。ありがとう」
みんなでスラちゃんをなでなでしてあげる。ぽよんぽよんとした体がひんやりしてて、とても気持ちいい。これだけで癒されるというものだ。
「セシル? どうしてお父さんに付いていきたいの?」
「村以外を見てみたいから……?」
「えっ? それだけ?」
それだけって……正直にいえば、うちの村は家が百棟もあるけど、前世で住んでいた都市や夢に見た世界スケールを思えば小さいと思うし、外を見る機会がないからね。
「リア姉とソフィは外を見たくないの?」
二人は間一髪入れず同時に頭を横に振った。
…………即答だった。
「どうして二人は外が興味ないの?」
「だって……ね~」
また二人が顔を合わせて頷く。
そして衝撃的な言葉が放たれた。
「だって外には――――セシルがいないでしょう?」「でしょう?」
…………。
えええええ!? 僕!?
「それはいいとして、セシルが外に出たいのは分かったけど、お父さんに怒られちゃうからね。やっぱりもう少し待つべきじゃないかな」
「やっぱりそうだよね……はあ……僕も町に行ってみたかったな…………」
『ご主人様? 町が見たいのぉ?』
「うん? うん」
『それなら~いい方法があるよ~?』
「えっ!? 本当に!?」
スラちゃんからあまりにも意外な返事に、心臓が跳ねる。
『でもね……ご主人様の許可ないとできないの』
「なんでも許可するよ!」
『わ~い~!』
リア姉とソフィはスラちゃんの声が聞こえていないはずなのに、僕との会話でいろいろ察してくれたみたいで、みんなで目を輝かせた。
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