第11話 危機は……意外にも近くに潜む
『『『スライムストライクアタックぅ~!』』』
ドガーン! ドガーン! ドガーン!
三匹のスラちゃんたちが子猪三匹に次々当たる。
去年は「ぼよ~ん」って音だったのに、いまは「ドガーン!」って凄まじい音と衝撃波が周囲に響いていく。
増えたのは何も音と衝撃波だけではない。
ダメージも激増していて、一撃で子猪を倒せるようになった。
だがしかしっ! これだけならまだそう多く成長したとはいえないっ!
本領発揮はここからだ。
スラちゃんたちが吹き飛ばした子猪三匹はそれぞれの方向に吹き飛び、その先にいた子猪たちにぶつかりボーリングのように追加で子猪を倒した。
ここで着目するべきは、吹き飛んだ子猪にまだスラちゃんたちの攻撃が残っており、別個体にぶつかったときに追加ダメージを与えること。
そしてもう一つは、スラちゃんたちが――――ものすごく賢くなったこと。
『一気に四匹倒したよ~ご主人様~!』
『褒めて褒めて~!』
『わ~い~』
ぼよんぼよんと音を立てて僕にくっついてきて、なでなでをおねだりする。
倒した子猪は別のスラちゃんたちが回収して村に運ぶ。
二千匹もいるスラちゃんたちなので、運ぶのもお手の物だ。
スラちゃんたちで日を分けて『狩り組』『運送組』『護衛組』『衛兵組』『(村人たちの)手伝い組』など分かれて働いてくれる。
「むぅ……スラちゃんたちが全部倒しちゃって私のやることがないよ~」
不満を口にしながら魔法を唱えるソフィ。
「――――オープンサーチ!」
綺麗な魔力の波が周囲に広がっていく。
「あっちだ! スラちゃんたち! 勝負だよっ!」
『あいあいさ~!』
『わ~い~!』
ソフィとスラちゃんたちがものすごい速さで森の奥に走っていく。
「こら~っ! 森の奥には入っちゃダメだからね!」
「わかってるよお~」
僕とリア姉も急いでソフィの後を追いかける。
スラちゃんたちもたくさんいるし、何の問題もないと思うけど、念には念を入れて僕たちもソフィから離れないようにする。
しばらくソフィとスラちゃんたちの狩り合戦が始まった。
ソフィの氷の槍が何本も飛んでいき、スラちゃんたちは超高速で体当たりを繰り返して、どんどん子猪を狩り尽くしていく。
「リア姉?」
「ん?」
「魔物って狩り尽くしたらどうなるの?」
「うん? どうなるんだろう? 私も気にしたことないからお母さんに聞かなかったわ」
「そっか…………まぁ……大丈夫か」
ちょっと嫌な感じがする。
いつもなら風にただなびいている木々の枝や葉っぱ。食用としても利用できないし、火をくべるために枝を使ったりはするが、葉っぱはそういう用途でも使えないし、お茶も作れない。
そんな木々がやけに騒いでいるように感じてしまう。
――――【スキル『危機感知』を獲得しました。】
危機感知……?
こんなときにどうしてこんなスキルを……?
――――そのとき。
森の奥から轟音が鳴り響く。
「ソフィいいいいい!」
「お、お兄ちゃん!?」
「急いでこちらに集まって!」
「わ、わか――――」
ソフィが僕の方に来ようとした時、轟音が鳴り響いた方向から巨大な猪が猛スピードで走ってきた。
今までみた魔物とは比べ物にならないほどに禍々しく、赤い目は見ただけで全身が震えた。
――――【スキル『威圧耐性』を獲得しました。】
時が止まったように見える。
猛スピードで走り向かってくる巨大な猪。
それに驚いて転びそうになっているソフィ。
驚いているけど誰よりも先に手を伸ばしてソフィに走るリア姉と僕。
そんな中、僕たちよりも速く体を張ってソフィを守ろうと前に跳びこむスラちゃんたち。
そしてまた時間が始まり、巨大猪を止めようとしたスラちゃんたちは踏まれたり飛ばされたりして全身がボロボロになっていった。
スラちゃんたちだってこの一年間でずいぶんと強くなったはずなのに……まるで歯が立たず、魔物の強さというものを目の当たりにした。
このままいけば僕たちが着くよりも前に、巨大猪によって
何とか……何とかしなくちゃ。
決して慢心していたわけじゃないけど、お父さんたちを説得してこうして狩りにやってきたんだ。
イレギュラーなときにこそ誰かを守れなかったら、僕は何のために異世界に転生して、大事な家族や仲間たちと出会ったんだと自問自答を繰り返す。
守りたい…………いや、絶対に……! 守る!
――――【スキル『
無我夢中で獲得した新しいスキルを使った。
どんなスキルかなんてどうでもいい。ただただソフィを守れるなら、何でもする。
僕の体が一閃の雷になったような感覚。
通り抜けるスラちゃんたちの姿が見えた。
吹き飛ばされただけで全身がボロボロになって、何となくだけど…………もう彼らが
息を荒げて走っている巨大猪を僕は全力で蹴り飛ばした。
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