第9話 姉妹の実力は……超絶級!?
翌日。
新たな力を開花させたソフィは、今朝から魔力操作を使い続けている。
さすがはすごい才能なだけあって、すでに魔力操作はお手の物で、起きてから朝食を取りながらもずっと魔力操作で魔力を動かし続けている。
「リアちゃんもだけど、ソフィちゃんもできるようになったのね?」
お母さんが手を丸めてソフィを覗きこみながらつぶやいた。
「うん! お兄ちゃんとお姉ちゃんに教えてもらったの~」
「うふふ。それはよかったわね。それにしても綺麗に分かれてしまったわね」
「分かれた……?」
「ノアちゃんとオーウェンちゃんジャックちゃんは剣士系統で、リアちゃんセシルちゃんソフィちゃんは魔法系統なのよね」
ん? 僕もそこに入る……?
不思議そうな表情をしていると、それに気付いてふふっと笑うお母さん。
「セシルちゃんのレベルはないかもしれないけど、魔力操作が使えるんだからね? ちゃんと魔法使いだと思うわよ」
「そっか……分類的には魔法使い……と」
ふとお母さんが驚いた表情を見せて苦笑いを浮かべた。
「今日はソフィちゃんも狩りに連れていくのよね? リアちゃんも」
「うん! スラちゃんたちもいるし、大丈夫かなって」
「森深くまで入っちゃダメだからね?」
「わかった!」
お母さんに手を振ったあと、スラちゃんたちに乗り込もうかなと思ったら、ちらっと見えたノア兄さんたちが羨ましそうにこちらを見ていた。
ノア兄さんたちも狩りに行きたいのかな……? 今度聞いてみて、お父さんにも相談してみようか。
スラちゃんたちに乗り込んで、僕、リア姉、ソフィで村の東を目指した。
うちの村は大陸でも最南端に位置しているらしく、周りに村や町は一切ない。王国に所属しているみたいだけど、王国の者が訪れたことは僕が生まれて一度もない。
村の北にある道を進めば王国の町に着くが、その他方位には森が存在する。
東はエルダー森で弱い魔物が出現する森だ。ここに子猪の魔物が現れるのでうちの村の食糧の大きな助けになっている。
僕たちはエルダー森しか入らないように注意されている。
「ソフィちゃん。いい? 初めての狩りだからって無理はしちゃダメだからね?」
「あいっ」
「できるだけ私も近くにいるけど、もし魔物が溢れて乱戦になったら私のところにすぐに来てね?」
「あいっ!」
リア姉はまだ七歳のはずなのにお母さん顔負けのしっかり者になっているな。
「じゃあ、いくよ~!」
可愛らしい声が森の木々の間から広がっていく。
ガサガサって茂みの奥から音が響いて、子猪が三匹同時に現れた。
「――――ファイアボルト!」
ソフィが繰り出した両手の前に真っ赤に燃える炎の玉が現れ、子猪に向かって放たれた。
ボーン! と発射される音が響き渡る。
スラちゃんたちよりは少し遅い火球が子猪に直撃すると、たった一撃で子猪を一匹倒した。
「――――ダブルキャストぉ~!」
今度はソフィの手の前に火球が二つ現れて発射された。
前に使った魔法を今度は
これもソフィの強い才能によるスキルなんだと思う。なんせ彼女は――――魔法使いの中でも最高峰と言われている『賢者』なのだから。
あっという間に子猪三匹を仕留めたソフィは、喜ぶのかと思いきや、意外にも冷静に視線を周囲の茂みに向けている。
「――――オープンサーチ!」
今度は魔力が波のようになり、周囲に広がっていく。
「そこだっ! アイスランス!」
茂みの奥に向かって氷の槍がとんでいく。
「スラちゃんたち。倒した猪を持ってきて~」
『『『は~い!』』』
スラちゃんたちは会話ができなくても、人の言葉は聞き取れる。
ソフィは次々魔法を放って視界に捉えていない魔物を倒し続けた。
楽しそうでもなく、その目はまさに――――狩人。そのものだ。
そこにいつもの可愛らしいソフィの姿はなく、真剣な表情で油断一つせずに狩りに勤しむ。
とても頼れるようになったんだなと思う反面、寂しくも思う。
リア姉は今日が初めてではないけど、まだ数えるくらいしか出てないはずなのに、彼女もまた真剣な表情でソフィや魔物の動きを目で追い続けた。
「ソフィちゃん? そろそろいいかな?」
「あいっ! 魔法の感覚は少し慣れたから!」
「うん。じゃあ、これからは私もいくね? ――――マジックエンハンス」
リア姉からソフィに青い光が放たれる。
「――――アイスランス!」
本日何度も使っていたアイスランス。今回作られた氷の槍は、さっきまでの物よりも二倍は大きかった。そして、放たれて飛んでいく速度もまた二倍は速かった。
それからリア姉がソフィに魔法を付与し、ソフィが魔法を放ち、すかさずリア姉がまた魔法を付与しを繰り返していく。
そうして姉妹は共同作業を繰り返した。
ソフィの最強才能の一つである『賢者』に負けずと劣らない、いや、むしろ賢者よりも高みを目指せられる――――『教皇』なだけあると思う。
そうして本日の狩りは大量に獲物を獲得することができた。
二人は嬉しそうにハイタッチをして可愛らしく笑顔に染まった。
さっきまで凄まじい魔法を使っていたとは、とても思えない無邪気な可愛さだ。
…………あれ? 今日の僕って…………何もしてない……?
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