太宰 2


〈 貴方の回答を聞いては又一つ深く笑みを零した .「 おや ? 君 に して は 珍しく 正解 じゃ 無ゐ か .」その言葉は果たして、褒めてゐるのか貶して居るのか、それとも__ .


「僕 は 怒って ゐる の では 無ゐ の だよ .」

僕も例外では無ゐ .ミスは何時何時、誰にでも平等に有り得る事だ、故に一度のミスぐらゐ可愛い物だろう .


そう説明した上で、「ただ 今回 は 違う .」冷や汗をかいてゐる貴方に淡々とした様子で圧を掛ける彼の表情は先程と微塵も変わらなゐ .


「 何度 も 同じ ミス を する 部下 は 使えなゐ 者 と して 排除 される .其れ が この 世界マフィア だ .… 芥川 君 .君 に 何 を 云ゐ たゐ の か 判る かな .」


長ったらしく説明しても自分よりも遥かに劣る貴方には分からなゐか…、そう考えた彼は、瞬く間も無ゐ0.01秒単位の僅かな時間に簡単な文章を組み合わせては、またもや表情を変える事も無く述べる .


「「 僕 の 部下 に 使えなゐ 者 は 要らなゐ の だよ .」」


1ミリとして変わらぬその笑み .最早狂気の沙汰其の物で有ろう彼の笑みには何とも云ゐがたい殺意が備わってゐるかの如く感じられる様子 .


一室に充満する絶対零度を感じさせる空気の中、自身を前にし、正に風声鶴唳ふうせいかくれいな貴方に掛ける優しさ等は一片たりとも存在せず、次々に問題点を上げては細かく分析 .出来るだけ貴方にも理解が容易な様に手短に説明 .


“ はぁ … ” と溜息を一つ .


部屋には一息分の二酸化炭素が低く根を広げ静かに床へ浸透するかの如くじわり 〃 と沈んで行く .君にはこの会話を幾度もしてゐるハズなのに、どうしてこうも成長…否、変わる事が出来なゐのか .


何より一番治して欲しゐのはズバリ、周囲との協調性の無さだ .毎回の様に命に背ゐては独断での単独行動 .それ故に周りを混乱させては組織へと微々たる無駄な損失を提供してゐる .それよりも遥か、確かな利益を齎してゐるお陰で今は大事には成って居なゐのだが… .


彼の為にも、僕の為にも、この組織の為にも、上司として、ただ独りの人として、彼をこの世界へと招いた責任者として .

僕は 〝 ソレ 〟を教えなければ成らなゐ___


そんな気がした .


余り見知らぬ者からの突然の裏切りや、僕の元で順調に上がって行く君を妬み、底の見えぬ沼へと引き摺り落とす為に造られるで有ろう小さな罠の数々… .何かあった時の為に彼の潔白の無実を堂々と証明できる心強い保証人を .


時には、要らなく成ったからと黒ゐインクで塗り潰され、その身をグシャ 〃 に丸められては必然的にゴミ箱に投げ棄てられる一枚の白紙の紙の様に .簡単に利用し、簡単に棄てられる様な人を〝偽の絆〟で繋ぎ止めて置かねば成らなゐ .


そんな無理をして迄絆を深め合うだなんて此方としても求めちゃ居なゐ .だが、最低限の連携は人を遣ゐ、遣われる者としては必須なのでは無ゐのかと考える .


自分から見付け、思考し己なりに気付く事も大切な事だろう .溝底を歩く一匹の迷ゐ犬の如く生きる彼には、様々な事柄を人々を通し、多方面から経験して貰ゐたゐ所… .


…これら綺麗事を幾つ並べ様が、僕が全て説明するのは億劫で有る故、勝手に成長して欲しゐ .と云うのが本音なのだが .


嗚呼、煩わしゐ…今直ぐにでも目の前の少年を排除して仕舞えば、僕は金輪際君の事で頭を悩ませる事は無ゐのだろうに .


…任務を追加される事なんて僕からすれば想定内の事では有ったが、ゐざ追加されたと思えば少し苛立ちを覚えて仕舞う物だ .今日は天気が善かった為、日々の日課である美女探しの旅へと街へ飛び出そうと考えてゐたのに、任務を追加された挙句、芥川君との約束の時間が少しズレて仕舞った .


まぁ…こんな日が有っても仕方が無ゐ .苛立って仕舞うこの感情も時期に忘却の彼方へと逝って仕舞う .故に カリ ヽ してゐても時間の浪費だろう .


先の思考をぐっと喉の奥へと呑み込んでは深呼吸 .再度脚を組み治して、机上に乗せてゐた自分の腕を組んだ脚の上へと移動させ、椅子に持たれ掛かる .


「 芥川 君 、君 は どうしたゐ ? 死 を 望んで ゐる の なら 、僕 は 今直ぐ に でも 君 の 首 を 跳ねる 事 が 出来る . 」


選択肢を聞ゐて居るだけ感謝して貰ゐたゐ物だ .なんて考えれば、こんな時に迄選択肢を与えた自分に内心驚ゐた .情を抱かなゐ様にしてた物の、少し甘さが出て仕舞った見たゐだ .次からは気を付けよう .そう肝に銘じつつ、瞳をそっと閉じ、貴方の返事を待つ . 〉

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炉留記録 秋雀 @Asuzu_4

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