第2話 帝都 中央 "近衛軍団司令部”

『既に、手は、打っております。

 帝国で、一番優秀な、"調査部隊”を派遣しました。』





 軍団司令部の廊下を、足早に歩く二人の男が居た。

 赤毛の背の高い筋肉質の男が、肩をいからせて進む。


「大変な、ことに、なったなぁ・・・。 “ヤス”。」

 赤毛の男が、少し視線を落とし、隣を歩く金髪の青年に語りかける。


「ああ。そうだな。“ロン”。

 まさか、副司令が、噂通り“ヅラ”だったとはな。

 命令を下達される際に、直接触って確認したから間違いない。

 まさか、そのまま落ちるとは、予想外だった。」


 金髪碧眼の青年は、自身の髪に手をやり、クルクルと巻き毛を回した。


「そっち、じゃあ、ない。」


 赤毛の男は、筋肉で盛り上がった太い腕を、相棒に振って、突っ込みを入れた。


 副司令の部屋で、二人が任務完遂の激励を受け、握手を求められた際、いきなり軍団No2の髪の毛を触るものだから、立ち合いの"百人隊長”と“副官”が、目を見開き唖然としていた。

 その場で、取り押さえられなかったのは、副司令の温和な人柄のおかげだろう。


「ああ、そうだった! “ロン”。

 特別ボーナスの、金貨500枚。

 さすがの俺も、一晩で、全て使い切れるか、わからんなぁ。」

 

 金髪の青年は、あごを撫でながら、ほくそ笑む。


「そっちでも、ないぞ。

 それは、北部国境までの往復分の支度金だ。

 1カ月分だから、一晩で使うなよ。」

 

 赤毛の男は、ふと心配になり、相棒の横顔を見つめる。

 こいつ、まさか、本気で言ってるのか?

 さすがに、そんなことは、ないよな?


 相変わらず、相棒の表情は、読めない。


「"つけ”を、まとめて払えば、イケると思ったんだが。

 まあ、いいさ。

 任務成功時の、特別報酬に期待するか。」


「支度金には、部下達の分も、含まれてるからな。

 それに、俺たちに、たぶん、ボーナスは、それほど出ないぞ?」 


「なぜだッ!」


 金髪の青年は、狼狽える。

 

「訳は、自分の胸に、問え。

 上司の“髪の毛”を、引っ張ったら、ダメだろ。」


 赤毛の男は、ため息をつき、首を振る。


「立派なカツラだったなぁ。・・・俺も買おうかなぁ。」

 

 金髪の青年は、小さく呟く。


 自慢の金髪の本数が、最近、心配になっているのだ。

 しょっちゅう、手で触っているから、抜けるんじゃあないか?

 職責が重い副司令とは違い、ストレスという訳ではあるまい。



 二人は足早に、司令部がある建物の中庭を抜ける。



 赤毛の男は、周囲に人影が絶えたころを見計らい、呟く。


「・・・それにしても、大変なことに、なった。」




「まさか、"調査部隊”の本隊も、行方不明とはな・・・」

 

 

  

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