第1話 帝都 中央部 "宮廷”

※この作品には過激な表現を含みます! ご注意下さい。



「どうして、早く言わなかった!?」


 広大な宮殿の"謁見の間”は、まだ明るい時刻にも関わらず、冷え切っていた。

 

 煌びやかな装飾の部屋の最奥に、金で縁取れた、背の高い椅子があった。

 

 椅子から、ふらふらとした影が、手を震わせながら、立ち上がる。



 一人の若い男が、周囲の人影が少なくなった事を見計らい、怒気を発した。


 若い男は、頭の"月桂冠”を、床に叩きつけると、続けざまに地団駄を踏んだ。


「なんで、こうなる前に、私に、誰も言わなかった!?なぜだッ!?」

 

 若い男は、周囲に赤鬼のような形相を向け唾を飛ばし、周囲の物に当たり散らす。


「誰か、答えよッ!!」


 周囲の空気は、凍り付いたままだ。


 脇に控えていた、侍従の少年がゆっくり近づくと、怯えながら、男の"王冠”を拾い上げる。


 少年は震えながら、緑の木の葉で造られた王冠を、若い男に差し出したが、男は一瞥もしない。


 その時、初老の、白いヒゲを生やした禿頭の男が、近づいてきた。


「大丈夫です。ご安心ください。陛下。」


「なにが、大丈夫なのかッ!? 

 私は、帝国中から、信頼を失う!! 

 ああ、そうだっ! 大陸中の笑いものだッ!!


 私はッ! この私がッ!

 高い金を出した、"闘技場”で、市民共の罵声を、浴びることになるんだぞ!?」



 筋肉質で体格の良い、初老の男は、物おじしない。

 努めて静かな声で、若者に語りかける。


「既に、手は、打っております。

 帝国で、一番優秀な、調査部隊を派遣しました。」

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