第11話

「改めまして、お初にお目にかかります。アメリア・フェイドと申します。皇太子妃殿下にお会いできて光栄ですわ」

「初めまして、アメリア。では早速聞こうかしら?」


 珍しく私に敬意を払ってくれるアメリア。

 皇太子妃所属のメイドですら未だに私に対して冷たい態度を取るのに、皇后陛下所属のメイドがこの対応をしてくれるとは。

 まあリナーのことだから、私のことをとても良いように話しているのね。

 何回もリナーとロイの相談に乗ってきたから、今となっては異常な程に二人とも私のことを崇めているきらいがある。

 あまり最初からハードルを上げないでほしいのだけど……。


 まあそのおかげでこうして新たな相談者が現れてくれたのだから、感謝しないとね。


「はい……。恋人が騎士団に所属しているナック・レオードといいます。私達は何回か付き合って別れてを繰り返しているのですが……その……彼は人より少し好奇心旺盛と言いますか……他の女性に目移りをすることが多くて……」

「ちょっとアメリア! そんなんじゃ伝わらないでしょ! セレスティーナ様聞いてください! そのナック・レオードという男、本当に救いようのないクズなんですっ!!」

「リナー……そこまで言わなくとも……」


 なるほどねぇ、なんとなく見えてきたわ。

 とりあえずリナーが説明する方が正しく現状を知れそうだから最後まで聞いてみましょう。


「アメリアと付き合い始めたのは1年前くらいで、最初の3ヶ月は優しかったそうです。でも突然別れようと言ってきて、理由はアメリアが重かったからだそうです」

「ナックはモテるから……他の女性に取られないかと心配でつい束縛を……」

「ここまでは私もわかります。問題はその後! 1ヶ月くらいしたらまたよりを戻そうとアメリアに言い寄ってきたんです!」

「それはまあ……なかなか自由奔放な殿方なのね」

「自由奔放なんてものじゃないですよ!」


 あら……リナーは相当そのナックという男に腹を立てているみたいね。

 普段は大人しいリナーがここまで声を荒げるなんて珍しい。

 隣でアメリアあたふたしている。


「アメリアもナックのことがずっと忘れられなかったので二つ返事で承諾してしまったのですが……また3ヶ月後、突然降ってきたんです!」

「はい……その時は以前のような間違いをしないよう、重くないように気をつけてはいたのですが……」

「詳しく理由を聞いてみれば、『俺に恋愛が向いていないだけ』って。そんなのおかしいですよね!? それならなんでアメリアとよりを戻そうとしたのか……! だから私、ナックのこと調べたんです。そしたらアメリアと別れた後、別のメイドを口説いていたそうで! もうほんと信じられないです!」


 なるほどね、なんかそれっぽいことを言ってアメリアを振ったくせに、蓋を開けてみれば他の女性を好きになったってことか。

 それならそれで隠さずに『好きな人ができた』と言えばいいのに。

 正直じゃない男には好感が持てないわね。


「それでさすがにアメリアも諦めようと頑張ったんですけど……最近またそのクズ男がアメリアにアプローチを始めまして……」

「だ、だってナックは本当に優しいんです! 付き合い始めは何度も愛を囁いてくれますし、大事にしてくれるんです! 私……もう何を信じたらいいか……」

「アメリア……。こんな感じで、いくらナックはクズだ、やめとけといってもなかなか聞いてくれなくて……。セレスティーナ様、どうすればいいでしょうか……?」


 捨てられた子犬のような瞳4つに見つめられる。

 ふむ……アメリアもなかなかクセの強い男に捕まったものだ。

 さて、ナックはクズ確定だろうけど、問題はどうやってアメリアに諦めつかせるかよね……。


 まずはやっぱり調査からスタートかしら?

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