第3話 探索と予兆

「『クリエイト:レッサーアンデッド』」


 ネクロスが詠唱を行う。この世界ではどうなるか俺としても気になるところだ。



──するとネクロスの身体についている骸骨が一つ落ちた。

 まぁ、そうなるように設定したのは俺なのだが、実際こうして見ると少し怖い。

 …それはまるで生きてるかのように動き始め周りには黒い泥の様なものが纏わりつく。そして段々と狼のようなモンスターが形成されていく。

 これはエピック・ワールドで言うアンデッドウルフという大したことない下級モンスターだが、その俊敏な動きが初心者の内だと少しばかり面倒な相手だ。


「上出来だな、ネクロス。」


「ありがとう御座います。」


 さて、ここで俺も1つ魔法を使おうかな。

 ─エピック・ワールドでは特別、仕事ジョブは存在しない。

 好きなスキルや魔法を習得してレベルを上げていくと言った具合にできるのだ。

 そんな中俺は、全属性の最低限の魔法以外は全て強化魔法をひたすらに上げていた。

 これは序盤の内に公式チートキャラとか言われてるティアを従えていたことに起因する。

 お陰様でどんなに弱いキャラでも中間層位のプレイヤーに対してそこそこ善戦できる程度まで強化できるようになった。

 そんな強化魔法をアンデッドウルフにかけることで効率を上げれると踏んだのだ。


「『グラントパワー Lv.1』」


 初めて魔法を使った、その筈なのだがまるで昔からやっていたかのようにすんなりと使える。

 暖かい光に包まれたアンデッドウルフは見た目こそ変わらないが先程とは桁違いに能力が向上している。


「ここまで…強化…されるとは…陛下…流石…です…」


「これくらい造作もないさ、ネクロス。」


「はっ!ではアンデッドウルフ、陛下の為に周辺の探索を行いたまえ。」


 命を受けたアンデッドウルフは任務遂行のため、玉座の間を飛び出して行った。


「それじゃあ〜私もぉ〜始めますねぇ〜グリーンコネクション〜」


 グリーンコネクションはハルモニアの持つスキルの一つである。

 端的に言えばあらゆる自然や生命との感覚をに共有ができる。

…のだが感覚を持たないものとは共有したところで何も起きない。

 とは言え動物などと共有すれば自由に周りを把握できるので便利ではある。

が、これも共有する対象を術者が認知してなくてはいけないので使い勝手が悪いのと動物の動きまではどうにも出来ないので見たい情報がみれるとは限らないのだ。


「あ〜、そこに飛んでる鳥とぉ〜共有しますねぇ〜」


 ここから鳥は見えないのだが認知するというのは勿論、気配でも良いので探知系の魔法を彼女には納めさせている。


「あぁ、頼むぞ。」


「はぁ〜い!」


「では、本題に入るが2人には随時、情報共有を任せる。現状、些細な情報でも

 有益だ。何かあれば私の話を打ち切ってでも情報を共有して貰おう。」


 2人が深く頷く


「えぇ、えぇ、では本題に入りましょうか…只今私の支配下にある魔物達に城内

 の状況を確認させておりますが、元々この城に居たもの達に関しては問題あり

 ませんわ。」


キリアルヒアの報告に一先ず安心したが…


「アイテム等の類はどうなっているのだ?私の把握している限りは問題ないと思うのだが…」


「えぇ、えぇ、テンペスタの言う通り武器やマジックアイテムは問題ないですわね、ただ食糧や素材として使うアイテムの消失が確認されています。」


…それは少し困る。

 俺や【至神種ゴッド】である覇皇六将、【越神種エーテリアン】であるティアを始めとした一部の配下には食事の必要は無いのだが、必要している配下が大半である。

 更には素材も永久に使えるアイテムに関しては問題ないのだが、消費型のアイテムの補充が効かなくなってしまう。

 この世界に関して不明瞭な点が多い今、できるだけアイテムの消費は避けたいのだ。


──更にキリアルヒアの報告は続く。


「更に、城に居た者以外の全ての存在が消失しておりますの。」


「ソノジョウホウニ」「間違いはないのかしら?」


「えぇ、城外にいた私の支配下にある者達との連絡が取れませんの。」


「ソレダケデハンダンスルノハ」「些か問題じゃないかしら?」


「はぁ……そこで議論をしても意味がないだろう。

それにどの道、連絡が取れないなら、いないと考えるべきだ。陛下、それで宜しいでしょうか?」


「あぁ、それで構わないとも、別にあれらは戦力としても足しにならんしな。」


 それどころか食糧や素材が不足している今、嬉しい話だったりする。

 そう、元々この城に居たものなんて500にも満たない数だ。

 せっかくの広い大陸だったので主戦力となるキャラ以外は城以外の適当な場所に配置していたためである。

…そんなことを考えているとハルモニアが報告を始めた。


「少しかかりましたがぁ〜半径5km圏内に集落や大きな構造物はぁ〜

ありませんでしたぁ〜同時にぃ〜脅威となりうる存在もぉ〜

恐らくいないと思いますよぉ〜」


「周りの地形はどうなっている?」


「この辺りは殆どが草原ですがぁ〜北の方に大きな森林がありましたぁ〜」


「なるほど、ならば近い内にその森の探索を行うとするか。」


「私も報告を宜しいでしょうか?」


「あぁ、ネクロス。頼む。」


「現地の人間と交戦に入りました。」


面白い展開になってきた─。

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