第97話 デート3 買い物

「鈴華さん,ここですか?無理ですよ」

食事を終えて,僕らはショッピングモールにやって来ていた.その中で明らかに不釣り合いな店に入っていた.


「買わないわよ,流石に,見に来ただけよ.」

ショーケースには宝石が付いたアクセサリーが並んでいた.鈴華は,無表情であったが,ジッとそれを見ていた.


「……見に来るのって大丈夫何ですかね?」

普通にそわそわしていた.


「見るくらい良いのよ.多分.」


「……そうですかね.」


鈴華は,アクセサリーを眺めてから,こっちを見て

「それに,何年後に買えば良いのよ.」

そう言って小さく笑った.


「……はぁ」

何年後か……なるほど.


鈴華は,更にいろいろ見て,一つの指輪指さした.

「これ,可愛いわね,雀君」

シンプルなデザインの指輪だった.


「……高くね.」

値段は凄かった.まあ,高校生にとっては絶対に購入不可能な金額のものだった.なるほどな,なるほど.


どうしようもなくて.とりあえず,ジッと鈴華を見た.

「……」


「……」


無言で数秒見合った後に,

「流石に長居するのは不味いわね.ここは失礼させていただきましょう.」

鈴華はそう言うと店員さんの方に小さく頭を下げていた.僕もそれに合わせて小さく頭を下げた.



店を出た,鈴華は,こっちを見て

「次は,バックでも見に行きましょうか?雀君」

そう言ってニヤリと笑った.


「無理ですからね.」


「冗談よ.それに,そこまで興味ないわ.とりあえず.付いて来なさい,雀君」

そう言うと鈴華は,僕の右手をグイグイ引っ張った.


「分かりましたよ.」


「で,どんな服が好きなの雀君?」

鈴華は,ズンズン歩きながらそう,忘れていた質問を投げかけてきた.


やばい,考えてなかった.てか,どんな服でも鈴華は似合うしな……

「……いや,ええ.鈴華.これ答えたらその系統の服しか着ないんですか?」


「そうね,そっちの方が効率が良いわ.」

鈴華は,一定の落ち着いた声のトーンでそう答えた.そうか,そしたら,いろいろな服着ている鈴華が見れないのか.


「……普通にいろんな服着ている鈴華が見たいんですけどね.」


そう僕が言うと鈴華は立ち止まり振り返った.

「……仕方ないわね.お金かかるのよ,服を買うのにも.本を買う代金が減るんだら,ちゃんと,褒めなさいよね.雀君」

そう言ってニコッと笑っていた.一瞬,顔を赤くしていた気もするが一瞬過ぎて分からなかった.


「……はい,分かりました.」

ちゃんと服装も言葉を使って褒めようと思った.


「それで,例えばどんな服かしら,雀君.」

再び歩き始めた鈴華は,そう言った・


「えっ,あれこの話終わりじゃないんですか?」

完全に油断していた.


「終わりじゃないわよ.雀君.」


鈴華の見たい服装か……

「浴衣とか?」


「季節を考えなさいよ.ここはオーストラリアじゃないのよ.」

時期が確かに可笑しかった.


「……じゃあ,えっと」

他に何かあるかな,うーん.


「まあ良いわよ,たくさん質問してあげるわ.覚悟しておくことね.それと来年の夏を楽しみにしておきなさい」


来年の夏は鈴華の浴衣が見ることが出来るらしい.

「……楽しみにしておきますよ鈴華」

来年の楽しみが出来たことで一瞬テンションが上がったが,よく考えたらこの後,大変な作業が待っていることを思い出して,テンションが下がった.

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