第96話 デート2 昼食

カラオケが終わり,昼食の為にファミレスに入った.ファミレスは空いており,4人席に向かい合って座っていた.


鈴華は,無表情だったが,少し不貞腐れていた.

「……」


それで,無言でジッとこっちを見ていた.

「……鈴華,拗ねないでください.」

その圧に負けて,気がついたらそんな事を言っていた.


「拗ねて無いわよ.別に,何よ.ちょっとカラオケで勝ったからって」

鈴華は,そう言うとジッとこっちを睨んだ.


「いや,えっと,上手でしたよ.鈴華」

カラオケの点数で勝った.でも,鈴華は歌が上手かった.まあ,贔屓目が入ってるかもしれないけど.


「良いのよ,そんな気遣い.」

鈴華はそう言って口を膨らませていた.なんでこんな不機嫌なんだよ.いや,不機嫌なのか?分からない.


「…いや,本当に,上手かったと思いますよ.」


「……うるさいわね.雀君,それで何?私が負けたんだから願いを聞いてやるわ.」

鈴華は,そう言うと少しキレていた.


「急に言われても.」

何も考えて無かった.そもそも,鈴華は,どう言う予定だったのだろうか?


僕が考えていたら

「……それなら,私が提案してあげるわ」

鈴華はそう言ってこっちを見た.


「ええ……」


「例えば,その権利を私に譲渡するって言うのはどうかしら?」

鈴華は無茶苦茶言って来た.


「ええ……」


鈴華は数秒迷って

「……分かりました,譲渡して下さい,雀君」

上目遣いをしてそんな事を言って来た.何も分かってないでしょ.


「……上目遣いとかしても無駄ですよ.大体,鈴華は上目遣いですし.」

可愛いからって言っても言いわけでは無い.


「……もう良いわよ.それで,何?お願い.」

鈴華は逆ギレしていた.


鈴華は何をお願いするつもりだったのだろうか?

「……そうですね,鈴華が勝ったら何をお願いするかを教えて下さい.」


「……それがお願いかしら.雀くん」


「うん,まあ,特に思いつかないですし.」


「分かったは,私が勝ったら……」

鈴華は言葉を詰まらせた.


「勝ったら何ですか?」

何を言うつもりだったのだろうか?


「私が勝ったら,もっと……イチャイチャして欲しいって言おうと思ったわ」

鈴華は無表情でそう言った.


「ふぇ」

予想外だった.


「だって,可笑しいじゃない.普通もっとイチャイチャするものよ,物理的に,カップルって.」

鈴華は,少し顔を赤くしてそう言った.えっと,だってさ.


「……」

そうかも知れないけどさ,恥ずかしいじゃん.


「何か言いなさいよ.雀君.」

鈴華は,そう言ってジッとこっちを睨んだ.


「恥ずかしい.」

それ以外に言うべきことは無かった.だって,恥ずかしいし.


「うるさいわ.うるさい.」

鈴華はそう言って,顔をこちらに近づけて睨んだ.


「……えっと,どうすれば?」

圧がすごい.


「とりあえず,まずは,隣に座りなさい.分かった,雀君.」


隣に座るのと向き合って座るのどっちが良いかは諸説ありそうだが従う事にした.

「……まあ,それで機嫌が直るなら.」

まあ,結局話辛くて元の席に戻る気もするが,まあ今はどっちでも良いか.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る