第93話 来訪者3
「知ってました.」
次の来訪者は予想通りだった.まあ,シンプルに心配しに来たのだろう.写真部の二人だった.
「「まあ,私たちは単純に心配で来ただけですよ.」」
多分,普通に心配で来たのだろう.もしかしら野次馬根性かも知れないが,そこまで……いや,あり得るな.そもそもこの二人は結局,どうなったのだろうか.
「お疲れ様です.」
とりあえず,頭を下げた.
「……まあ,お二人は,何も関係ないわね.」
鈴華は,無表情でそう呟いた.
「まあ,関係ないですね.はは」
「勝手に巻き込んだだけだからね.はは」
仲良く目を見合わせてお見舞いに来た二人は笑っていた.
「マスゴミ部」
気が付いたら口が動いていた.
「「写真部です.」」
凄い,息ぴったりだった.
「おお」
鈴華は謎に感心していた.
「「学校に来たらまた,新聞を作ってあげるので」」
絶対に写真部ではないな.この人たち.
「嬉しくな…」
そう僕が言いかけたときに,鈴華が割り込んだ.
「私と雀くん,二人での記事でお願いするわ.」
「なんで乗り気なんですか?鈴華」
良く分からなかった.まあ,楽しそうだから良いけど.
「好きなのよ,新聞.じゃあ,君たち2人はもう良いわね.」
鈴華は.,そう言うと立ち上がり,二人を立ち上がるように催促して,そのまま部屋を出て行った.
「「雑じゃないですか?」」
そんな二人の言葉は完全に無視されていた.
「次,呼んでくるわ.」
そんな,鈴華の声だけが聞こえた.
しばらくして,あまり接点がない人が来た.この関連する出来事の加害者であり,ある意味で最大の被害者.
「……こんにちは.その節は,すいませんでした.」
操られて鈴華に昔いろいろした人物.
「……こんにちは,許したんですね,鈴華.」
鈴華は,普通にしていた.全く過去に何もなかったみたいに.
「雀君,私は寛容なのよ.被害者じゃない.それに心にゆとりがあるわ.」
鈴華は笑っていた.いや,これは,嫌味を言っているのかもしれない.
「……確かに.」
「……被害者じゃないわ梨花のこと何も知らなかったのも事実だしね.」
名前を忘れてしまった,その人物は,そう言って下を向いていた.
「そうですか.まあ,それはそうと,僕はあなたが鈴華にしたことは許してませんけどね.」
鈴華が許すのと僕が許すのは別の話だ.前は,昔は対して気にしてなかったが.なんか,今対面すると.凄い,敵対心とかそう言うのが溢れてしまうのだ.
「えっ,だって,あの時は,スルーしましたよね.」
「……いや,まあ,あの時とは状況が違うんです.」
あの時と鈴華との関係性が全然違う.だから仕方ない.
「……それなら,そうね.春野 鈴華はやめておいたほうが良いわ.」
彼女は,そう言って笑いながら部屋を出て行った.そのセリフを聞いたのは多分2回目だ.
「……」
「……」
部屋に残った,僕と鈴華は数秒間,目を合わせてから笑った.
「雀くん,変ったわね.」
鈴華は,そういうとこっちを見て渾身の笑顔を浮かべた.変わったな,変わった気がする.でも,
「それは,お互い様ですけどね.まあ,なんか明日から学校に行けそうです.」
多分,鈴華も変わったと思う.いろいろあった,でも,前を向いて行こう.これからは,記憶をしっかり持って忘れないようにしながら.
「そう,じゃあ,残った二人は,大丈夫かしら.」
鈴華は小さく笑った.
「いや,あっちが大丈夫じゃないでしょ.」
冗談であるのは,すぐに分かった.それに最後の二人が誰かも分かっていた.
「誰か分かってるのかしら.まあ,呼びましょう.」
鈴華は,そう言うと最後の二人を呼びに行った.
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