第92話 来訪者2
初めにやって来たのは幼馴染と成志の野郎だった.どういう組み合わせってことと,成志には申し訳ないけど,鈴華の近くにいないで欲しい.
「片方は気に食わないけど.功労者ね.」
鈴華は,そう無表情で説明して僕の隣に座った.説明がまだあるとパッと隣を見たが,無表情でこっちを見返された.説明は終わりらしい.説明不足だと思うが,まあこれはいつもこんなもんだった気もする.
幼馴染は,いつものように
「雀.私,功労者ね.まあ,幼馴染というか,姉的なポジションの私としては,普通だけどね.」
そう言って笑っていた.いつも一緒とまでは言わないが,良く一緒にいる雄介と一緒ではないのは奇妙だが.まああっちが負い目を感じているのか.
「どうも,ありがとうございます.」
そう言って笑った.まあ,幼馴染の機嫌は取っておく必要がある.学校に登校して,この後に控えるクリスマスで出かけるときのアドバイザーを失うわけにはいかない.
「まあ,私は,知り合いに片っ端に連絡しただけで走ったりしてないんだけどね.」
ドヤ顔だった.まあこっちの方がありがたい.多分気を使ってドヤ顔をしているのだろう.
「ドヤ顔漏れ出てますよ.」
「バレた?まあ,待ってるよ,学校で.あっ,あと妹が.『心配させるな殺すぞ』ってキレてた.」
うわ……怖いな.
「……お茶菓子で」
とりあえず機嫌を取らないと行けないな,うん.
「後,『食べ物では釣られないから』とも言ってた.」
先読みされてるし,まあ心配をかけたことは今度会ったときに謝っておこう.
「……」
僕が返答をしようとしたときに隣の鈴華から何故か軽いパンチを食らった.
「話は,終わりね.次はもう一人のほう.」
それで会話は強制終了になった.
「強引に終わらせるね.仕方ないな.」
幼馴染はなんか滅茶苦茶笑っていた.何なのだろう.
「……功労者.いや,俺は贖罪が正しい.俺も関係者だしな.」
成志の野郎はそう言って謙遜していた.
「ありがとうございます.何をしたんですか?」
シンプルに功労者で,鈴華がこの人を呼んでくるのが不思議だった.
「家を見つけただけです.」
成志さんは,謙虚に言っていた.ずっと,違和感が半端ないな.でも,意味が分からない,絶対に誰かが家を知っているはずでしょ.
「だって,そんな遠くでは,それに誰か知ってるはずでは」
「ややこしい事情があって,誰もあの人のもう一つの家の場所は知らなかったから.」
……なるほど,ややこしい家庭の事情だったのか.父と母が離婚か,もしくは別居か.それに加えて片方も……はぁ.まあ,いろいろあったのか…….彼女があんなに過激な行動を取ったのは,父親がいない,僕に共感していた部分もあるのだろうか.まあ,とりあえず僕を見つけるのを助けてくれたらしい.
「ああ,えっと.ありがとうございます.その,まあ鈴華の半径50メートル以内に入らなければ,えっと知り合いぐらいでお願いします.」
とりあえず,感謝して,認識を改めることにした.
「教室に入れないのか.俺.」
「……いろいろありましたけど.今回はありがとうございました.助かりました.後,もう一つ.」
本当に助かった.それに,成志さんには一つ感謝するべき場所があるのだ.そう思って,鈴華を見たら目があった.同じことを考えているらしい.
「「ある意味で恋のキューピットしてくれてありがとうございます.」」
鈴華と僕は声をそろえてそう言ってから,成志さんに頭を下げた.
「……性格悪いな.」
「ああ,これでチャラで良いですからね.でも,」
昔のことを引きずる必要もない.彼が完全なる被害者ではないが,完全なる加害者でないことも確かなのだ.
「俺も馬鹿じゃないから成長はするんだよ.」
成志さんは,昔の感じの笑顔を浮かべた.
「では,交代しましょう.まだ沢山人はいるので.お二人とも,また学校で会いましょう.」
鈴華は無表情で僕の隣でそう言って頭を下げた.でも,最後のセリフは,
「最後のは,僕の言うべきやつですよね.また学校で会いましょう.」
そう言って恩人の二人に頭を下げた.
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