第90話 姉との会話 (鈴華視点)

カッコ付けて,勢いで動いてから,これ以上部屋にいたら恥ずかしくて死にそうなので,雀君の家を出ると姉が迎えに来ていた.心配で来たらしい.まあ,優しい姉ではある.助手席に座るのはめんどくさそうだったので,後ろの席に座った.

「大丈夫そうだった?未来の義理弟君は.」

姉は,そう言いながら車を出した.


「……そういうのめんどくさいわ.まあ,分からないけど.大丈夫だと思うわ.」

大丈夫になるまで私が助ければ良いだけの話だ.


「そう,まあ鈴華が支えてあげるんだよ.」

姉はまともな部分もあるのよね.


「分かってるわ.」


「それで,この時,支えたって言うのを口実にたくさん物を買ってもらったり,優しくして貰うのよ.」

姉はこう言う所があった.これを冗談じゃなくてガチでして,それでダメになるを永遠に繰り返しているのが私の姉だった.


「……そんなのだから,モテないのよ.」

思わず,口にしてしまっていた.


「うわ,酷いな.鈴華ちゃんは.私わざわざ迎えに来たのに」

姉はヘラヘラ笑っていた.何を考えているか分からなかったが,確かにその通りだった.


「…確かに,ごめんなさい.ありがとう.」

とりあえず,見えてないかもだけど姉に向かって頭を下げた.


「素直で宜しい.それで,何で真っ赤なの?」


姉は,そう言った.可笑しい.私は顔に出ないように注意した,それにさっき鏡見た時も……考えすぎたら怪しいわね.

「……寒かったからよ.」

嘘ではない.寒かったのは事実だ.


「うん?ホント?チューでもしたか?したか?」

姉は,ニヤニヤしながらそう言っていた……ウザい.


「お酒飲んでいないわよね.」

心配になった.いや,一応確認だ.姉はこんな感じな時もあるけど.


「うん?お姉ちゃんは,シラフでこれですけど.それでどうなの?」


大丈夫らしい,それと答えるまで姉は聞き続けるらしいわね.

「……した」

だって,あれは勢いで……そもそも付き合ってるのだからおかしくないわよね.


「うわあ,可愛いなぁああ」

姉はテンションが可笑しかった.ウザいし.


「本当に飲んで無いわよね.」

心配になった.


「大丈夫だから.まあ,頑張ったね.で,ずっと気になってるんだけど.」

……まあ,大丈夫なのかしら,分かりにくいから辞めて欲しいわ.


「何かしら,姉さん?」


「雀君と付き合った理由はお姉ちゃんには分かるの.二人でいるときに,雀君は知らなけど,鈴華は居心地良さそうだし.でも,どうやって出会ったの?」


「……言われたのよ.2回目に喋ったときに,って言わないわよ.私が覚えてれば良いのよ.雀君が忘れてるのは,少し気に食わないけど.でも,まあもうそこは良いのよ.私だけ覚えていれば.」

気が付けば早口で喋っていた.可笑しいわね……何かが可笑しいわ.可笑しいのよ,最近.まあ仕方ないわ.


「めっちゃ喋るね.お姉ちゃん.びっくりした.まあいいや.一つ.お姉ちゃんからアドバイスしておいてあげるよ.我儘は言うのも必要だけど,偶には聞いてあげるものよ.」

姉がドン引きしていた.


「そうなんですね.」

あまり強く言い返すことが出来なかった.


「じゃないとお姉ちゃんみたいになるわ.」

説得力が違うと思ってしまった.だから,一つ覚悟を決めた.


「……カラオケで歌うわ.」

今度,雀君の前でカラオケを歌おう.


「うん,よく分からないかな.まあ,良いんじゃない.」

姉が再びドン引きしていた.

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