第84話 想い出のアルバム3(鈴華視点)

戻って来た.走れ私だ.今度,雀君に言おう.

それで2人で卒論アルバムを見た.


しばらく探して,修学旅行の写真を見つけた.そこには,後ろに小さく人が映り込んでいた.


「……雀じゃん」

茉奈ちゃんがそう言って笑ったいた.


「雀ね」

間違えなく雀だ.写真を何度も見比べても雀だ.


「……」


「……一旦電話するわ.」

いろいろ迷ったが,手取り早い方法を選ぶ事にした.


「それが良いと思う.」


電話を数度鳴らすと繋がった.

『もしもし,雀.』

そう言った電話の先は凄くうるさかった.


『ちょっと待って,下さい.』

雀君は少し叫んでいた.一体どこに居るのだろうか?うるさい場所.


『分かったわ.』

ガサゴソと移動する音が聞こえた.


『はい,何ですか?鈴華』


『何処にいるの今.』

気になった.そもそも男子3人で何処に行ったのかしら.


『ああ,ゲームセンターです.今,外に出ました.』

ゲームセンターか行った事無いわ.いや,違う,今じゃ無いわね.


『そう.いや,それは今良かったわ.聞きたいことがあるの.昔,私にあったこと覚えてるかしら?』

面倒なのでとりあえず聞いた.


20秒程度無言の時間が流れた.

多分,思考を整理して,質問の意図や目的を考えて経過しているのだろう.雀と言うより猫みたいな警戒心だ.

『…………携帯を落とした時の話ですか?』

それは,2回目だったのだ.覚えていないわね,やっぱり.


『違うわ.その前よ.中学校の修学旅行で会わなかったかしら.』


雀はしばらくフリーズしていた.多分,思い出してるのだと思う.しばらく経過して返答が返って来た.

『……鈴華に会ったかしらないけど,でも,人には会いました.確か,迷子の人と会ったんですよ,自由時間に』


『自由時間,ボッチだったんですか?雀君.』

悪いのは私では無く私の脊髄だ.


『それには理由があるんですよ.』

雀が少し叫んでいた.そりゃそうだ.幼馴染がほぼ弟の雀を見捨てる訳がない.


「あっ,思い出した.その時,私たちに珍しく気を使っていなくなったんだよ雀.」

電話以外から茉奈ちゃんのそんな声が聞こえた.なるほど,理解した.


『なるほど,ただのボッチじゃないのね.』


『ええ,まあ,迷子の人を助けて,でも,助けたの,鈴華ではないと思いますよ.何の話か分からないけど.』

雀は,多分罠の類や引っ掛けでない事を確信したのか,そう軽やかに答えていた.私は迷わないし,この時はちょうど面倒な事に巻き込まれていた.高校まで引きずるとは思わなかったけど.


『……あっ,分かったわありがとう.雀くん』

記憶が戻った.雀と出会った事を思い出した.


『えっ,何が?』


『後で説明するわ.一旦切るわね』

説明は面倒だった.


『えっ,ちょっと』

まあ,雀は混乱しているが,後で謝れば問題ないだろう.


「思い出したわ,私,雀君と中学の修学旅行で喋ったのよ.」

とりあえず,茉奈ちゃんに報告した.


「おお,運命かな?」


運命ではない.

「でも,大した話はしてないわ.私が,会ったのは迷子だった同級生を雀が連れてきた時に少しだから.」

私が話したのは世間話と言うか,覚えていないレベルの会話だ.雀君が同級生を連れて来てそこで少し話した.多分,1往復程度だ.


「その同級生って誰だったの?鈴華.」

茉奈ちゃんの質問はごもっともである.


「……思い出せないわ.私は,その頃,それどころじゃ無かったのよ.」

でも,思い出せないのだ.そんな興味も無かったし余裕も無かった.


「……でも,思い出さないと.多分さ,いや,分からないけど.手紙の犯人その人の可能性あるでしょ.」

占いを信じる訳では無いが,私もそう思った.


「あるわ,ちょっと待って思い出すわ.」

最大限記憶を巡らせた.問題は修学旅行の写真が撮られた場所が集合場所で,同級生が大勢いるのだ.


「私は,鈴華の中学の同級生に聞いてみる.」

茉奈がそう言って携帯を熱心に動かしているので私は必死に頭を動かす事にした.

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