第83話 想い出のアルバム2(鈴華視点)

「紅茶入れるね.」

ケーキを買って帰宅した後で.茉奈ちゃんがそう言った……


「……大丈夫よ.私がするわ.」

危ない気がした.


「何その目,雀と同じような目するじゃん.」

私は知っている.こう言うので何故か茉奈ちゃんは失敗する.


「火傷してもらいたくないわ.」


「馬鹿にしてるよね,鈴華」


馬鹿にしてない.心配してる.

「してないわ,保険よ.それに,アルバムを用意しておいて欲しいわ.」


「それなら良いけどさ.」

不満そうだった.


そんな事でお湯を取りに行ったが,途中で携帯が震えた.

雀君からのメッセージだった.

『ペンギンのストラップ要りますか?』


そう言えば,そんな話もしたかしら?何処に行ってるのかしら?まあいいわ.

『要るわ,お揃いで二つ.」

恋人はお揃いのものを持つらしいと聞いた.


『……分かりました.二つですね.』

少し嫌そうだった.まあ,雀君は恥ずかしいとか言いそうだ.良く分からない,でもとりあえずその様子を見るために携帯にでもつけて貰おう.それにしてもだ.


『聞かないでサプライズでも良いのよ.』

プレゼントはサプライズが良いのでは無いかしら.


『いや,自分のセンスとか信じてないので,無理ですよ.』

確かに,雀くんはセンスが良いとは思えない.


『まあ良いわ.ありがとう.』

買ってきてくれるだけ嬉しいわ.

そんなやり取りをしていたせいで紅茶を淹れるのに時間が少しかかってしまった.


茉奈ちゃんの部屋に戻ると退屈そうに待っていた.

「遅かったね.こっちは準備出来たよ.鈴華.」

茉奈は,そう言ってこっちを睨んでいた.


「申し訳ないわ.」

どんだけケーキを食べたいのだろうか?いや,そっちのほうが育つのかしら?分からないわ.


「あっ.先に行っておくけどさ,中学時代の雀君はちょっと姿が違う時期があるからね.」


「じゃあ,今の姿は高校生デビューかしら?」

意外だ,そう言うのするタイプとは思えなかった.


「それも,違うんだけどね.正確に言えば途中まで違うの見た目.ほら,これ中1の後半からかな?」

茉奈は,適当にページを捲りまくり,指さした.そこには,雀くん?がいた.


「……なんでこんなに髪の毛ぼさぼさでダルそうなの雀君は,それに眼鏡?今もどっちかというと適当なほうだけど,流石におかしいわね.」

可笑しい.雀くんは気にするほうではないが,最低限はしている.相手に気を使わせないはずだわ.なのにこれは,わざわざ嫌われるような見た目にしている.


「いや,これには事情があるのよ.私も後から知ったんだけどさ,自慢じゃないからね.」

茉奈ちゃんがそう言ったので


「うざ」

そう答えた.これは,雀ゼミで出たところだ.


「えっ,急に,辛辣.」


「雀君に習ったわ.」

成果が出た.


「……昔,雀君の幼馴染の人が死ぬほどモテていたらしくて,雀は,その手の類の人に友達になろうとか,恨まれていて……」

なるほど,茉奈ちゃんのせいか.


「ああ,なるほど.絶対にあり得ないだろう見た目にすることで,そう言うのから逃れようとしてたのかしら.」

雀君は,そういうことをするかしないかって言われたらする気もするけど.


「うん,だから,一時期,凄い死にそうな見た目してるんだよね.心配になったもん.」

茉奈ちゃんが心配している時点で多分失敗していたわね多分.


「ああ,なるほど,彼氏が出来て元に戻ったとわけね.」


「うん,ちょうど,修学旅行の辺りまでかな?あっ,そう言えば修学旅行は同じ日に同じ場所じゃ無かった.」

話が急に変わった.同じ場所?


「学校が違うわよ.」

中学は違う学校だ.


「いや,そうだけどさ,確か.」

茉奈ちゃんがアホになったわけでわなわね.……あっ


「……あっ.いや,そう言えばあった気がするわ.雀の中学校の生徒とあった気がするわ.」

あの頃は,面倒な事に巻き込まれていたし,よく覚えてないけど,そんなことが会った気がする.

茉奈が固まっていた.それから,

「うん?待って,いや,まさかね.」

そう言って笑っていた.


「どうしたのかしら.」


「いや,雀も他の学校の人に会ったって言ってたから.」


雀が,でもそれだったら私に言いそうなものだしな……

「そんなこと言ってなかったわよ.私の中学の生徒と会ったら.……いや,雀くんが忘れてるのかしら.」

雀くんは忘れているかもしれない.


「いや,鈴華もだよ.覚えてないの?」

茉奈ちゃんの言葉はその通りだが,覚えていない.何で会ったかも覚えていない.


「覚えてないわよ…….家に帰るわ一回.」

一つ,思い出した.


「急にどうしたの?鈴華ちゃん.」


「もしかしたら,卒アルに載ってるかも知れないわ.」

写真を撮った気がする.もしかしたら,写真があるかも知れない.


「確かにそうね,とりあえずケーキは冷蔵庫に閉まっとくね.」

茉奈ちゃんは,そう言って冷蔵庫にケーキを運ぶ準備をしていた.優しいわね.


「お願いするわ.少し行ってくる.」

私は家に卒アルを取りに戻った.



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