第81話 予定外

文化祭,2日.色々あった.いろいろあったが,最後のイベントで2日目の記憶が全て吹き飛んだ.


僕はステージに立っていた.


「優勝したコメントを一言.」

ミスコンで優勝した.うちの高校はふざけているらしい.どうやら悪ノリが勝利したらしい.マジかよ.


「……何で.ちゃんとしろよ,真面目に投票しろよ.」


「可愛いよ,芽有ちゃん」

笑い交じりの声が聞こえた.凄い怠いヤジだ.


「最悪だ.」

そう叫んだ.


「……それでは,優勝した気持ちを誰に伝えたいです.」


「鈴華です,舞台に上がって来てほしいですね.」

司会者のその言葉に反射的にそう叫んだ.恥ずかしいこの気持ちに巻き込む事にした.


「……仕方ないわね.雀君.」

鈴華はそう言って小さく笑っていた.それからゆっくりとステージに向かって歩いていた.


「それでは,春野 芽有さんこと天野さんから一言.鈴華さんにあるようです.」

その時に司会者がそう言った.


「はい?」

思考が追いつかなかった.そんな事言ってないし,聞いてない.


「……」

鈴華はニコニコ笑顔だった.


「うん?」

なるほどね,まだ僕を真っ赤にするやつ終わって無かったのかな?


「……」

鈴華はニヤニヤしながらステージ上の僕に近づいて来た.……笑顔の鈴華で嬉しいと思う僕は多分手遅れだ.


「ちょっと,待って,どこから.」

ステージにたどり着いた鈴華に僕は一応小声で尋ねた.


「優勝したのは,私も驚いてるわ.本当は特別賞を用意して貰う予定だったのよ.それで私が登壇する予定だったのよ.」

鈴華は,笑いながらそう言った.


「……最低.」

最初から全部仕込みだったらしい.


「ドッキリよ.」

鈴華は笑っていた.可愛い…じゃなくて


「悪魔.性格悪い.」

そう言って鈴華を睨むと


「褒めすぎよ,雀くん.」

そう言って小さく笑っていた.


「はやく言えよ.」

「男らしくないぞ」

「ほら,もう呼び出して言いたいことって一つでしょ.」

会場からはヤジが飛んでいた.


「うるさい.ミスコンですよ.これ.」

とりあえず,ヤジにキレ返しておいた.可笑しい,僕はこう言う事を大衆で言うタイプじゃ無かった.


「……何?雀くん.」

わざとらしく鈴華は,無表情で首を傾げていた.


はぁ,本当に,もう恥ずかしいよ.本当に,

「……… 鈴華,大好きです……」


そう小声で鈴華に聞こえるように言ったが,鈴華はニヤッと笑い

「……よく聞こえないわ.」

そう言った.本当に,もうああヤケクソだよ.大声で言ってあげるよ.


「大好きです.はい.」

ステージで注目が集まる中で,叫んだ.


「知ってるわ.ありがとう.」

鈴華は,笑顔でそう言った.


本当に,本当に

「うわあああああ.」

最悪だよ.恥ずかしいし,ああ,絶対に真っ赤になってる.本当にもう.これから定期的に言ってこう言う反撃を貰わないようにしようかな?これは無理死んじゃうよ.


「そう言うことよ,あきらめなさい.」

鈴華は,良く分からない事を叫んでいた.


「……?」


「雀君は気にしなくて良いのよ.それにしても,真っ赤ですね.」

鈴華は,わざとなのか無駄に無表情でそう言っていた.絶対にわざとだろうな.


「……」


「仕方ないわね.今度,本でも買ってあげるわよ.」

本は貰っても嬉しいけど,でもそう言う事じゃ無い.


「鈴華じゃないんですから.」


「それも,そうね.」

鈴華は笑っていた.まあ,思い出に残る文化祭だった.


それにしても,この衣装で言うのは違うのでは?僕,メイド服だよ.マジで,ちゃんと今度は僕から僕がコントロール出来る環境で告白しよう.


クリスマスかな……ああ,なんで僕はこんな事を考えているのだろう.本当に,鈴華には振り回されてばかりな気がするが.まあ,楽しいので今日は許すとしよう.


それと真面目にミスコンに参加していた人には,鈴華を連れて土下座して回ろうと思いつつ,一旦ステージから走って逃げる事にした.

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