第79話 文化祭5

「占いなんて当てにならないわ.」

鈴華は,そう言いながら図書館で座っていた.休憩スペースで開放しており,図書委員と写真部で交代で人を置きながら管理していた.まあ,でも,人はほとんどいなかった.


「……まあ,学生の占いでプロでも何でもないですからね.そんな怒らなくてもいいんじゃないですか?鈴華.」


「何で,雀君は怒らないわけ.」

鈴華は,わりと怒っていた.予感していたが,鈴華は占いに向いていなかった.


「いや,そもそも占い信じてないので.」

占いでいろいろ言われたが,一ミリも信じていないので僕は何とも思わないが,うーん.


「なるほど.でも,ムカつくものはムカつくわ.相性が微妙って何なのかしら.いっそのこと悪いぐらい言われた方が良かったわ.」


「そんなもんですか.」

占いでは,僕と鈴華の相性があまり良くないと言われた.


「そんなものよ.それに,君に別の運命の相手がいるって言ってたのが許せないわ.」

ああ,そんなことを言われた.途中から全然話を聞いていなかった.まあ,運命の相手が仮にいたとしても,運命とか嫌だから絶対拒絶するし.まあ,信じたいものだけ適当に信じるか,与太話ぐらい思えば良いのに.鈴華は占いに向いてなかった.


「いないと思いますけどね.でも,あの人凄いですね.良くそんなことを正面から言えるものですよね.」

でも,一つ感心したことは,こっちの機嫌を取るような事は言わなかった事だろう.それは,普通に凄いと思った.


「ホントよ.でも良いわ,君の運命の相手が出てきたら私が蹴散らすわよ.」

鈴華は,そう言って,膨れていた.今日は機嫌が良いのか表情がコロコロ変わっていた.


「ふっ,まあお願いしますよ.」

まあ,蹴散らすまでも無いと思うけど.


「じゃあ,雀君.そろそろ戻りましょう.教室に.そろそろ来るでしょ.あの二人も.」

そろそろ写真部の人が交代にくるはずだ.


「まあ,それも良いですけど.教室に戻る前に,本部に行きましょう.」

その前にするべきことがあった.ほとんど図書室には人がいなかったが,一人迷子のような人が紛れ込んでいた.


「どうしてかしら?妹はもう大丈夫だと思うわよ.」

鈴華は小さく首を傾げていた.


「いや,違います.明らかな迷子を放置出来ないでしょ.」


「意外ね.私は雀君が子供苦手だと思っていたわ.だから,私の舎弟を呼ぼうと思っていたわ.」


舎弟?舎弟?誰のことを指しているか全く分からなかった.

「舎弟なんているんですか?鈴華」


「いるわよ.風花よ.」

風花?風花……どっかで聞いたような気がした.全く思い出せない.うーん,あっ.


「………ああ,嫌がらせしてた人.」


「ええ,黒幕じゃないほうよ.」


思い出した,なるほど,確かに舎弟に出来る.まあ100あっちが悪かったしな.それにしても,手紙とか来ないな.あれは終わったのだろうか?まあ終わってたら良いな.

「ああ,そう言えば最近手紙とか来ないですね.」


「それも,そうね.誰か知らないけど.諦めたのかしら.まあ,じゃあ子供を連れていきましょうか.雀君.」

鈴華は,そう言ってこっちを見た.


「そうですね.では」

まあ,鈴華が


「「子供を連れてきてください.」」

うん?鈴華と声が揃った.ナニコレ.


「雀君が連れて来なさいよ.私も子供苦手よ.」

鈴華は,そう言って無表情でこっちをジッと睨んできた.


「いや,僕も子供はあまり」


「……私の舎弟を」


あの人……

「いや,子供怖がらせそうですよ.だったら,写真部に頼みましょう.」

写真部の人に連れて行ってもらう方がマシだろう.


「……確かにそうね.写真部を呼んで来るまで待っておきましょうかここで」


「そうですね.」


「「まあ,休憩時間が少し長くなるのはしょうがないですよね.」」

鈴華と声が揃った.

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