第78話 文化祭4

「許さないわ.」

鈴華は,お化け屋敷の教室の出口を出てそう言ってこちらを睨んでいた.いや,最終的に一緒に行くって言ったよね.なんて言おうと思ったが,流石にそれを言えない状況であることは分かった.


「……ごめんって」


「本当に許さないわ.」

少し口を膨らませて,鈴華はそう言っていた.劇的にあざといが,多分本人は対して何も考えてないのだろう.考えてやるときは,もっとドヤって来る.


「本当に,ごめんなさい.あそこまで.」


「ビビって無いわ.」

鈴華は,無表情でそう言っていたでも…


「いや,めちゃくちゃ.」

説得力は全く無かった.そもそも,さっきまでビビっていた様子を見ているのだ.これで,そのスタンスは無理があると思う.


「ビビッて無いわ.そもそも意味が分からないのよお化け屋敷.ビックリして何になるわけ.意味が分からないわ.」

鈴華は無表情でありながら,少し感情的になっていた.


「いや,そうですね.うんうん.」

とりあえず適当になだめることにした.


「何ですか.その子供を見守る感じのスタンス.そもそも,私が怖いのはお化けじゃなくて,いきなりこられるだけなんですよ.」

鈴華が必死にいろいろ言っていた.もはや,何のための強がりか良く分からないが.


「分かってるよ,だって,『ぎゃあ,人』って叫んでましたもんね.」


「幻聴よ.」

鈴華は無表情でそう表情と声色だけ見れば凄いクールだった.


「見ましたか.お化け役の人の何とも言えない表情.」

あの,『あっ,人ですけど.いや…』って言いたげの表情は二度と忘れることがないだろう.本当に.


「……そんなことより,次のところに行きましょう.雀君.」

鈴華は,そう言っていたが,恐らくしばらく無理だろう.


「動けますか?足震えまくってますけど.」

鈴華は,お化け屋敷から出てからずっと足がプルプル震えていた.普通にビビりすぎだと思う.


「震えてないわよ.」

その嘘には無理があると思う.


「じゃあ,僕を杖代わりに立つのやめてくれませんか?」

鈴華は,震えているので僕を杖代わりに,僕を支えにしながら立っていた.まあ,ここまでビビるなら,流石にこれからはお化けに行くことはないだろう.それに,ビビるだけだったらまあまだ良いけどさ.ねえ.


「……意地悪ね.スズメ君,酷いわよ.」

鈴華は,そう言いながら少しふてくされていた.


「いや,普段の鈴華もこんなもの…」


意地悪なのは,鈴華なのではって言い返したが

「私が雀くんに意地悪をするのは良いのよ.その逆はダメよ.」

どうやら,見た目が可愛いだけで中身はジャイアンだったらしい.


「理不尽.」


「理不尽なのが私よ.でも,絶対にお化け屋敷には,入らないわ.別に入れない訳じゃないわよ.そこ大事だからね.雀君.」


「はい,そうですね,まあ,危ないですしね.今度は,急に出てきたお化け役の人とか,装置を破壊しそうですもんね.」

今回は,大丈夫だったが,僕が抑えたが,下手したら叫びながら反撃しそうだった.うん,鈴華は,お化け屋敷に向いてない.


「うるさいわ.………次は占いでもしに行きましょう.行くわよ,雀.」


「占いですか?なんか意外ですね.」


「乙女は占いをするらしいわ.」

鈴華は,謎の情報をドヤ顔で言っていた.何その情報.誰から聞いたわけ?


「誰情報ですか,それ」


「茉奈よ.」

幼馴染は,何の為に,何故,そんな良く分からない情報を授けたのだろうか.全く分からなかった.


「名にそのよく分からないデマ情報.」


「デマなの?まあ,とりあえず行きましょう.雀君.」


「行きましょうか,文化祭って意外に楽しいですね.」

まあ,占い行くぐらいいいだろう.ショッピングとかと比べて財布へのダメージは少ないし.楽しいし.完璧だ.


「文化祭が楽しいのわ違うわよ.私と一緒だから楽しいのよ.雀君」


鈴華はドヤ顔だった.何でこれを恥ずかしげもなく堂々と言えるのだろうか?

鈴華の照れる所とそうでない所の違いが分からない.

「そうかもですけど,良くそれを流れるように言えますね.」

とりあえず,顔をここで赤くしたらいろいろ言われるので無表情を取り繕って,そう言い返した.


「そんなに変なこと言ったかしら?」

鈴華は不思議そうにしていた.本当に,基準が良く分からなかった.


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