第77話 文化祭3
校内をうろちょろしながら,いくつかの教室に入り,今は,美術部の前で,待っていた.その時に会いたくない人に出くわした.
「雀兄さん……」
幼馴染の妹,まあほぼ妹の真紀である.めっちゃ笑いながら写真撮ってるし.ああ,本当に,最悪だよ.
「最悪だ.」
気持ちが思わず口から溢れ出た.
「ドンマイで~す.それで,鈴華さんは?」
一通り写真を撮り終えて満足したのか.普段の調子に戻っていた.
「ああ,今そこで似顔絵描かれてます.」
美術部は似顔絵を描いてくれる出し物?をしていた.
「ああ,そういうのもあるんだね.すごいね,文化祭.これが高校か.私も描いてもらおうかな?」
「いや,まあうちの高校が力入れてるだけな気もするけど.」
うちの高校はまあまあ文化祭をするほうだと思う.まあ他の高校のことよく知らないから,何とも言えないけど.
「それで,雀の姉貴は?どうして,似顔描いて貰わないわけ?」
僕は,そう言うのは恥ずかしいので遠慮することにしておいた.結果,外で待つことになっていた.姉貴?姉貴?兄貴とも言われたことないよ.姉貴.
「姉貴…….おい.」
「そんな怒らなくても,いいじゃん.あっ,後で二人のクラスには行きますよ.ちゃんと.」
真紀は,まあ僕のことを馬鹿にしているのだろう.本当に.まあこんなものか.
しかし,ここで会ったのは,見方によればラッキーなのかも知れない.僕と鈴華はしばらく宣伝のためにウロチョロしている,つまり,真紀が今,僕らのクラスに行けば,接客する必要がないのだ.
「今すぐ行ってこい.むしろ今行け.」
「……そしたら,二人に接客して貰えませんよね.バレバレですよ.思惑が.」
残念ながら,真紀は,アホでは無かった.じゃあ,タイミングを選んで来るのか.
「……ああ,何で休日に文化祭ってあるんだろうか.」
「人が集まらないからじゃないですか?雀姉さん.」
「……最悪だ.それで,一人で来たんですか?今日は,君の姉は特に何も無いですよ.って言ってました.」
真紀は明日来るべき人な気がする.何で今日も来るかな?
「知ってるよ.それに一人じゃなくて待ち合わせしてるんだけど.会えてないんですよね.会ったりしました?」
誰とだよって一瞬言いたくなったが,まあ十中八九,鈴華の妹だろう.てか,あっちは確か,今年受験.こんな吞気に,まあ鈴華の妹だから勉強は大丈夫か.
「うん?ああ,鈴華の妹ですか?会ってませんけど.」
「迷子ですかね.風香ちゃん先輩.」
「いや,流石にあり得ないでしょ.」
絶対に迷子にならない.何なら,鈴華の方が迷子になる可能性が高そうなレベルでしっかりしてると思う.まあ,シスコンなのは面倒だけど.
「だよね.でも連絡もつかないしな.」
連絡付かないって大丈夫かよ.探すのを手伝った方が良いのか?
「雀君.何?私が見てない間に浮気ですか?」
無表情で,そう言いながら鈴華が戻ってきた.怖いよ,無表情だと.
「違いますけど.絵描いてもらえたんですね.」
「ええ,描いて貰ったわ.」
鈴華は,そう言いながらドヤ顔で絵を見せてきた.結構上手に絵は描かれていた.僕は絵を描けないので尊敬に値するけど,実物のほうが……それに,何で鈴華がどや顔するのだろう?
「でも,意外ですね.そんなのするタイプじゃないと思ってたんで.」
「ええ,そうね.これは,君にあげるためのものよ.」
「ええ,」
貰っても困る.
「何?嬉しくないのかしら.」
無表情で,口を膨らませていた.
「いや,まあ絶妙に困ります.貰ってどうすれば良いんですか?」
「部屋にでも飾っておきなさい.」
鈴華は,そう言うと似顔絵を僕に押しつて来た.いや,まあ.
「ほぼ,毎日会うのに必要ですか?」
「そういうところ良くないと思うわよ.雀くん.とにかく飾りなさい.命令よ.」
鈴華は,そう言うと僕が先ほどまで持っていた看板を手に取った.どうやら看板をもってくれるらしい.
「はぁ,まあ分かりました.」
看板を持ってくれるなら,楽させて貰おう.それに,似顔絵もまあ,貰って部屋の何処かに飾ろう.
「それと,風香の場所なら大体分かるわ.多分,文化祭実行委員会の本部よ.迷子センターにもなっていたはずだわ.」
「「流石に」」
迷子じゃないって結論はさっき出たのだ.実の姉の言うことでも,違うと言い切れる.
「忘れたのかしら.本人が迷子じゃなくても,迷子に間違えられるのよ.」
あっ……
「……行ってみます.本部に,では,お二人とも後でクラスの方に行きますね.」
そう言うと真紀は,パンフレットのようなものを数秒眺めて本部のある方に向かって歩き始めていた.
「次は,何処に行きますか?」
「次は,雀君が決めて良いわよ.」
鈴華がそう言うので,とりあえず何があるかを僕もパンフレットのようなものを見て数秒考えた.
「お化け屋敷にいきましょ.」
「嫌よ.」
鈴華は食い気味に否定していた.あっ.でも,怖いものとか大丈夫そうだし.いや,違う,お化けが怖いとかじゃなくて,もしかして鈴華は不意打ちに弱いのか?
「よし,行きましょう.鈴華.」
「いじわる.」
そう言って少し不貞腐れた顔でそっぽを向いている猫耳メイドが可愛かったので,絶対に,お化け屋敷に行くことに決めた.
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