第76話 文化祭2
休憩時間になった.死ぬほど疲れた.
まず,シンプルに座れないのが辛い.後,接客は割とストレスだった.調理とどっちが良いかってなったら,まあ考えものだけど.接客はストレスだった.
鈴華が,めちゃくちゃナンパされており,それを見るのがストレスだった.まあ,鈴華は,無表情で無理って言ってたし,しつこい人は,普通に教師がそう言う人には笑顔で近づいて出ていくようにしていたので良い.良くわないけど.
問題は,僕もナンパされた.いや,マジでもう少し選んでするべきだと思う.それに,なんかこのぐらいだったらいけるだろ.的な空気があって凄く,凄く腹が立った.マジで,本当に腹が立った.それとともに,鈴華の気持ちが少し分かった気がする.
そんな苦難を乗り越えて休憩時間になったが,僕はまだメイド服を着ていた.正確には,休憩時間とは名ばかりの宣伝タイムになっていた.はぁ,そうだった.僕と鈴華は,クラスの宣伝用の看板を文化祭が行われている学校を歩いていた.
「楽しいわね,雀君」
鈴華は無表情でそう言っていた.うん,まあ多分楽しいのだろう.看板を持つ,僕の前をずんずんと鈴華は進んでいた.どこか目的地があるのだろうか?
「楽しくないとは,言いませんけど.なんかやっぱり思ってたの違うんですけど.」
普通に,違う気がする.いや,まあうん.はぁあ.
「そうかしら,看板を持ってたら自由に回って良いって言われたわよ.」
そう言う事ではないと思う.僕が言いたいことはそう言うことじゃない.自由に回れるとしても,衣装に自由が無いって何?いや,制服は自由じゃないけどさ.
「いや,看板を持ってこの衣装が問題で……それで,何で手始めがこのクラスなんですかね?鈴華」
鈴華にいろいろ言い返そうと思ったが,その前に言うべきことが出来た.鈴華が連れてきたのは,幼馴染と親友がいると思われる教室だった.
「来るように招待されたからよ.」
鈴華は,小さく首を傾げてニヤリと笑った.
招待されたとか聞いてない.まあ,聞いてたら行かないって僕は言っているだろうけど,でも報連相は大事だと思うな.うん.
鈴華の後をついて教室に入ると何かをしている様子は無かった.
僕らが入ってすぐに二人はこっちに気が付いて,しばらくこっちを見て
「「ふっ,ははは,雀ちゃん.」」
そう声を揃えた.本当に,こいつら……
「最悪だ.」
そう,僕が呟くと,二人は無言で目を合わせてから,無言でスマホを取り出して,写真を撮り始めた.
「「……」」
それから,再び目を合わせてニヤけていた.それだけなら,良いが,隣で無表情で写真を撮られるポーズを決めていた.何でこう言うのにノリノリなのかな?教えて欲しいよ,本当に.
「写真を撮るな.鈴華はノリノリでポーズを決めないで」
無駄に連写でパシャパシャさせている幼馴染が笑いながら
「……いや,想像以上に似合ってるね.雀,流石,私の幼馴染.」
そう言っていた.どこまで本気か知らないけど,凄い楽しそうって事は分かった.
「いや,幼馴染関係ないでしょ.」
「流石,俺の大親友,に……似合ってるぞ.」
今度は,連写しながら雄介が笑っていた.何なのこの人たち.
「親友関係ないよね.それで,何をするんですか?このクラスは」
こんな冗談はどうでも良いのだ.どうせ来たなら,このクラスの文化祭の出し物を.
「今日は,何もしないわよ.明日舞台をするから今日は特に何も」
幼馴染がそう不思議そうに首を傾げていた.うん?ってことは,ここに呼ばれたってのは嘘なの?
「……鈴華」
隣の鈴華を睨みつけると
「良いでしょ.楽しかったから.」
そう言って笑っていた.
「それは,鈴華だけでは?」
「でも,私が楽しいと雀も楽しいわよね.」
鈴華はドヤ顔だった.
「………」
まあ,一理ぐらいあって何も言い返すことが出来なかった.
「無言は肯定ってことね.では,次の場所に向かいましょう.雀君.」
ルンルンの鈴華に何も言い返すことが出来ずにとりあえず後をついていくしか,出来なかった.
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