第74話 おそろい
「雀。似合ってるわよ。」
隣で上機嫌に鈴華が笑っていた。
最悪だった。こんな目に合うとは思わなかった。本当に最悪だった。サイズがピッタリだし、絶対に、僕のサイズを母か、幼馴染か、友人か、鈴華が家に来た時か、どれか分からないけど。情報を奪い取っている。
「うるさい。似合ってないですから。」
似合うはずがない。体格は、細いけど、普通にごついし。ヤバいやつにしか見えないと思う。
「いや、雀くん。雀ちゃん似合ってるわよ。」
鈴華は、ご機嫌に笑っていた。鈴華は、何でこの衣装を着て、余裕そうなのだろうか?いや、似合ってるからだろうけどね。可愛いしね。とりあえず
「ちゃんをつけないでください。」
「嫌よ。ほら、にゃんってしなさいよ。」
鈴華は、こっちを見てニヤニヤしながら、そう言っていた。凄い楽しそう。
「しませんよ。」
「何よ、つまらないわね。でも、本当に結構似合ってるわよ。雀ちゃん」
鈴華さんがしつこいので
「そうですか。ありがとうございます。」
一旦、誉め言葉として受け取る事にした。はぁあ。しかし、この服手作りか、クオリティ高いな。まあ、クオリティー高いせいで、もう絶対に断れない。
「私は、どう?雀ちゃん」
鈴華は、そう言ってニャンとポーズを決めていた。よく無表情で出来るものだ。
「まあ、……似合ってると思いますよ。」
「そう、ありがとう。お揃いね。」
無表情で、鈴華は、そう言った。お揃いだけど、でもこれをお揃いっていうのはなんか違う。
「いや、絶対にこれは違いますよ。これがお揃いって、なんか違いますよ。」
「うるさいわ。今度は、これで出かけましょう。雀ちゃん。」
「嫌ですよ。」
これで出かけるのは、嫌だ。
「分かったわ。今度テストで勝負して」
鈴華は笑っていた。流石に冗談らしい。
「駄目ですよ。流石に怒りますよ。」
とりあえず、そう言い返した。
「怒らないわ。雀ちゃんは怒らないわ。」
鈴華は、謎にドヤ顔をしていた。誰目線だよ。
「いや、怒りますからね。」
「そうね、そう言うことにしておくわ。しょうがないわね。文化祭の時で許してあげるわ。」
「何で僕が許されてるんですか?」
可笑しい。
「社会は理不尽なのよ。」
鈴華は笑っていた。確かに、理不尽だ。
「いや、嫌ですよ。」
「それは、無理よ。文化祭当日宣伝の為にこの格好で歩き回るってもう決まったのよ。」
「いつ?」
聞いた記憶がない決定事項があった。
「君がいなかった時の教室でよ。」
ああ、なるほど。
「勝手に多数決されてますか?」
「君が教室から逃亡したのが悪いのよ。」
それは、まあ確かに……
「それは……ていうか、最初から。」
「違うわよ。私は黙認しただけで、これをしようと言い始めたのは私じゃないわ。」
鈴華は、察しが良いのか僕の言いたいことを先読みして答えていた。主犯では無かったってことね。なるほど。
「誰ですか?」
「あそこの二人よ。」
それは、この前、言い合いをしていたクラスメイト二人だった。
「どっちがジュリエットだと思う。」
「ダブルジュリエットで良いでしょ。それにメイドさんでしょ。」
「確かに、それもそうね。」
あいつらは、ダメだ。このクラスはだめだ。そう悟ことにした。
「ああ、本当に。はぁあ、とりあえず一緒に写真を撮りましょうか。鈴華」
もう、こうなったら諦めて受け入れて楽しむことにした。とりあえず、鈴華とのツーショット写真は必須だろ。まあ、似合ってはなくても思い出には残るし。うん。それに、思いのほか、恥ずかしく無かったのが救いだろう。
「良いわよ。ただしスマホの待ち受けにしなさいよ。」
鈴華は、そう言って笑っていた。
「えええ」
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