第69話 様子がおかしいズレてる方の姉(春野 風香 妹視点)

最近、姉の様子がおかしい。ウザいほうの姉は相変わらずだが、ズレている方の姉の様子がおかしい。しばらく見ていたが、流石に今日は聞かずには入れなかった。

「えっと、お姉ちゃん?どうしたの?」


「何が、」

本来のお姉ちゃんなら、無表情だ。


「えっと、いや。前から気になってたんだけど、何で一人で急にニヤニヤしたりするの?」

凄いニヤニヤしてる。何か可笑しい。普通に心配になるレベルだ。どうせ、あの人関連だろうけど。いや


「してないわよ。風香」


「いや……大丈夫?お姉ちゃん。」

無自覚なの?


「心配なんて珍しいわね。」

まだ、少しニヤニヤしていた。


「……いや、えっと、お姉ちゃん?その何でそんなニヤニヤしてるの?」


「可笑しいわね?もう慣れたはずなのに?」


「慣れた?何を言ってるの?お姉ちゃん。」

会話が成り立っていない気がする。


「まだ、駄目ね。もう少し練習が必要かしら」


「だから、何言ってるの?」

何の練習?


「雀くんに急に名前呼び捨てされても照れないようにイメトレしてるのよ。風香」


……うん?名前呼び捨てにしたんだ、あいつ、ああ、ふーん、そっか。ぶん殴りたい。いや、それは、まあ、お姉ちゃんが楽しそうだからいいんだけど。何で、照れないようにイメトレする必要があるの?

「うん?えっと?いや、いろいろ言いたいことが私あるけどね。とりあえず何で?」


「恥ずかしいじゃない。それに、私は、テンパりたくないのよ。」


うん?

「ええ、テンパってもいいと思うよお姉ちゃん。」


「駄目よ。恋愛は舐められたほうが負けなのよ。それが恋人でも同様よ。」


姉はキョトンとしていた。

何を言っているの?このアホな姉は。

「違うよ。お姉ちゃん。何処から、その間違った知識を手に入れたの?」


「間違ってないわ。だって、奏姉さんも、それにこの前、真紀ちゃんも」


あいつら……

「……そいつらは、嘘つきだから。いや、嘘じゃなくても信用しては行けないんです。分かった、お姉ちゃん。」


「そいつらって、風香と私の姉と、風香の友達よ。」

そうだけど、それとこれは違うっていうか。いや、何というか役に立たないっていうか。今度、文句を言いに行かないといけない。


「……まあ、今はその話はおいておきましょう。いろいろ、差しい引いても、お姉ちゃん。照れたほうが……あの人も喜ぶと思いますよ。」

何で、私は、綺麗にレシーブを挙げてるんだろうか?


「嫌よ。今更恥ずかしいわ。今までのポーカーフェイスが無駄になるじゃない。」


何それ?何でポーカーフェイスする必要があるの?いや、お姉ちゃん、もともと表情がそんなに変わるほうじゃないから、確かにポーカーフェイスでも違和感はないけど、でも何で?ああ、余裕ぶりたいの?


「そのポーカーフェイスが元々無駄なの。お姉ちゃん。そんなんだと、嫌われるかもよ。」

普通に心配になってきた。まあ、あの人は、そんな好きじゃないけど、でもこれはお姉ちゃんが悪いからな。


「えっ……」

お姉ちゃんが、本当に悲しそうな顔になっていた。ああ……、これを雀さんの前ですれば良いのに……


「ああ、嫌われないです。これは、あれだよ。例えばの話。大丈夫だけどねお姉ちゃん。でも、ほらね。」


「やっぱり、もっと、牛乳を飲まないとだわ。」

……ああ、最近それもあった。


「あと、それね。もう身長は無理だと思うよ。うちの家族見たことあるでしょ。」


「でも」

ああ、分かる。いや、まあ気にする必要ないと思う。雀さんは、多分ロリコンよりだし、それに明らかに見た目よりも性格とかそっちを好かれてる気もするし。何はともあれ、色々順番が違う気がする。


「それと、スタイルの方も無理だと思うよ。いや、お姉ちゃん。努力するのは、良いことだと思うけど。その前に、もっとすることがあるでしょ。優先順位って分かる?」


「……歌の練習?」


うん?

「違うよ。それ、何の話?今は、いいよ。とりあえず、お姉ちゃんはもっと素直になる必要があると思う。」


「嫌よ。雀君が先に素直になったら考えるわ。」

姉の目から、確固たる意志を感じた。ダメだ、こりゃ。


「ああ、もう知らない。もう、勝手に阿保みたいな心理戦しとけばいいよ。もう。」

とりあえず、心配しなくても良いらしい。まあ、最悪、これですれ違いそうになったら、間接的に姉の状況を私が言えば良いだけだし、本当にもう。




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