第67話 カラオケ
「鈴華さん。しんどいです。」
カラオケで、僕は死にそうになっていた。疲れた、普通に疲れた。
「飲み物持ってくるわ。雀君。お茶で良いかしら?」
鈴華さんは、ニコニコ笑顔でそう言った。凄い、上機嫌。それに可愛い。
「違う、そうじゃない。」
お茶は欲しいけど、そう言うことじゃない。
「ほら、次の曲始まるわよ。」
鈴華さんは、小さく首をかしげて笑っていた。今日、僕はずっと歌っていた。カラオケでひたすら歌い続けていた。鈴華さんが入れる曲をずっと歌っていた。
「後何曲、入れてますか?10曲よ。」
鈴華さんは、無表情でそう言った。なるほど、1曲4分程度だとしたら、40分か。
「嘘でしょ。」
「ほら、もう、曲始まったわよ。」
鈴華さんは、そう言ってカラオケの画面を指さした。次の曲は始まっていた。採点はもう始まっていた。
「僕、今何時間歌ってましたっけ?」
「2時間だわ。」
鈴華さんは笑った。
「……悪魔ですか?」
「私は、天使よ。でも、歌ってるのは、雀くんよ。」
「いや、だって、絶対に鈴華さん歌わないじゃないですか。」
だって、いや、カラオケ来てるなら歌うし、誰も歌わないなら歌うしかないでしょ。
「だって、私下手ですから。雀くん、まあまあ上手いから聞きごたえあるわ。」
鈴華さんは、無表情でそう言っていた。
「……褒めれば良いと思ってませんか?」
「ソンナコトナイワヨ。」
わざとらしく片言で鈴華さんはつぶやいていた。
「いや、別に、良いですけど?楽しいですか?」
「楽しいわよ。つまらなかったら、本を読んでるわ。」
鈴華さんは、そう言っていた。確かに、まあ楽しいなら良いけどさ。うーん。
「それなら、良いですけど。一曲ぐらい歌ってくださいよ。」
「そうね。君が100点取れば良いわよ。」
無理に決まっている。点が取れる曲でも90点超えたら御の字だ。大体の曲、80点台だし。無理無理。僕は、普通なのだ。
「無理ですよ。」
「頑張って、それと、飲み物はお茶で良いかしら。」
「お願いします。」
鈴華さんに、何を言っても無駄そうなので、諦めてお茶を取って来て貰うことにした。
それから1分してから、鈴華さんは戻ってきた。人を連れて
「……さっき、見つけたわ。」
「家では、飼えないので捨ててきてください。」
「私を捨て犬みたいに言わないでください。」
写真部の宇都宮さんだった。何で?ああ、まあいても可笑しくはないけどさ。
「何してるの?六角形の写真部さん」
「地獄の6人カラオケです。」
地獄の6人?六角形……、枢木さんの「昔みたいに仲良くしたい」発言。なるほど、理解した。
「……ああ、そう、もしかして幼馴染6人でとか?」
「……はは。正解です。」
宇都宮さんは、下を向いて笑っていた。
「それでは、宇都宮さんさようなら。雀君、早く次の曲始まりますよ。」
鈴華さんは、そう言って宇都宮さんに手を振っていた。僕も、それに合わせて、宇都宮さんに手を振った。
「助けてください」
宇都宮さんは、笑いながら、そう言っていた。
「「知らない」」
鈴華さんと声が揃った。まあ、僕らがどうにか出来る問題じゃないし、それに僕は100点を取るので忙しいから無理だ。
「……ねえ、このまま、代金だけ置いてしれっと帰っても良いと思いますか?」
「「良いんじゃないですか?」」
六角形から抜けるつもりなのか。宇都宮さんは、なるほど。
「それじゃあ、二人は、デート楽しんで下さい。さようなら」
宇都宮さんは、覚悟を決めた表情で部屋を出て行った。
そのあと、数時間経過したが、結局1回も100点は取れずに、僕が限界を迎えてカラオケは終わった。
「雀君。残念だったわね。」
鈴華さんは笑っていた。ご機嫌だ。
「また、カラオケに来ましょう。絶対に100点取るので」
一つ、目標が出来た。良かった、良かった。
「楽しみにしているわ。雀君。10年後ぐらいかしらね。」
10年後か。
「……この後、どうしますか?」
「勉強会でもしましょう。雀君」
勉強会か。遊びすぎたし、まあ。
「良いですけど。真面目ですね。」
「真面目な私好きでしょ。雀くん」
鈴華さんは、ニヤニヤ笑っていた。マジで何だよ。
「うん、まあ。」
「ふふふ、行きましょう。図書館にでも」
鈴華さんは、そう言ってご機嫌に笑っていた。
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