第63話 文化祭と出し物1
金曜日の放課後、教室には全ての生徒が残っていた。
「皆さん、えっと何かしたい事は……ああ、いやちょっと、何分か考えて下さいね。」
そんな委員長の声が聞こえた。委員長の仕切りで文化祭のクラスで何をするかの話し合いをしていた。
まだ鈴華さんとは隣の席なので、パッと横を見ると彼女もこっちを向いていた。
「ねえ、雀君。何が良いかしら。」
「文化祭か。……何も思いつかないですけど。」
そもそも、僕は行事に積極的に参加するタイプではない。別に文化祭に凄い参加したいぞってタイプではない。多分、鈴華さんも、そうだ。まあ、鈴華さんと一緒に回れれば良いかなってレベルだ。
「そもそも、何しても良いのかしら?」
鈴華さんは小さく首を傾げていた。
「知らないですけど。そうですね。まあ、予算がありますからね。」
多分、お金の制約はある。
「そうよね。予算ってどこから出てるかしら?分かる?雀君。」
「あれじゃないですか?学級費?」
首を傾げる鈴華さんに、適当に予想で返した。
「そうなのかしら?追加で費用が掛かるなら少し嫌ね。」
「それなら、お金掛からない案を考えましょう。それが採用されれば問題ないのでは?」
正直、文化祭のためにお金を使いたくなかった。別に文化祭無くても、学校はそれなりに楽しいし。
「そうね。うーん、休憩スペースとかどうかしら?」
確かにお金はかかりそうになかった。
「……絶対に賛成得られませんよ。鈴華さん」
「冗談よ。流石にそれは無理よね。そうね、何かしたいことないの?雀くん」
「ええ、出来れば何もしたくないですけど。」
何もしたくなかった。やはり、面倒なのである。
「そうね、食べ物系も、舞台系もどっちも面倒よね。うーん、やっぱり休憩スペースが良いわね。どうにかして、休憩スペースを押し通す方法を考えましょか。」
鈴華さんは、無表情でそう言っていた。
「良くないですよ。二人とも」
そんな時に委員長にそう水を差された。
「「……委員長さん」」
「真面目に考えてください。」
真面目に考えているつもりだったのだが……
鈴華さんは、ジッとこっちを見て小さく笑い
「………雀君、言われてるわよ。」
そうこちらを指さした。
「ええ、僕ですか?」
「そうよ。雀君だけよ。」
「二人ともです。」
委員長さんの正論が僕らに突き刺さった。
「……大丈夫よ。何をするにしても、決まればちゃんとするわよ。ね、雀君」
「まあ、それなりに与えられた仕事はしますよ。」
まあ、別に何でもよいのだ。どうせ何でもそれなりに頑張るし。
「……何に決まっても文句言わないでくださいね。」
委員長さんはそう言うと前の方に戻っていった。
「「はーい。」」
返事の自信はあった。
数10分後、議論は白熱していた。
「コスプレ喫茶が良いに決まってます。鈴華さんのメイド服見たくないですか?猫耳も付けましょう。」
「それを言ったら、鈴華さんのジュリエット見たくないですか?見たいですよね。」
普段は、仲が良い(多分)女子が二人で言い争っていた。まあ、これは、鈴華さんが与えられた仕事をちゃんとするって言ったせいである。そのせいで、こんなことになっていた。
「人気ですね。鈴華さん。」
「そうね、訴えてもいいかしら?セクハラよね。」
鈴華さんは、そう言って小さく笑っていた。
「まあ、確かに手伝いましょうか?訴えるの」
鈴華さんは、そう言った僕の目を見て小さく笑い、それから
「ふっ、ありがとう。それで、雀君は、どっちが好きなの?メイド服とジュリエットのドレス姿。」
そう言って笑顔を浮かべた。その笑顔は悪戯を仕掛けた子供のような純粋な笑顔で、鈴華さんは、シンプルに僕が困っているのを見るのが好きなんだと改めて認識した。
「………ノーコメントで」
まあ、僕が答えられるわけ無かった。そもそも、多分、どっちも可愛いのだ。
「チキン。まあ、良いわ。」
鈴華さんは、上機嫌に笑っていた。
その後、いろいろ議論した末に、結局、コスプレ喫茶をすることになったらしい。
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