第60話 結果

テストは終わった。

テスト期間中は、単独で勉強していた。まあ、登下校は一緒にしたりしたけど。そこでも勉強していた。

そう、テストは終わったのだ。完全に終わった。


テストが終わり1週間程度が経過して、テストの結果が全て戻ってきた。それで、とりあえず一旦図書室にやって来た。


「ねえ、まだ、雀君。」

鈴華さんは、小さくそう笑ってこっちを見ていた。いや、どちらにしても鈴華さんに告白するのは既定路線だったけど。違うのだ。これは告白にビビってるとかではなくて……


「……ちょっと待って。鈴華さん」

とりあえず、落ち着こう。素数でも数えるか。


「やっぱり、チキンなの?雀君。」

鈴華さんは、無表情で首を傾げていた。


「いや、今は、その前の地点で凹んでます……」

告白のハードルの前の出来事でダメージを受けていた。


「何が?雀君。」

鈴華さんは、不思議そうだった。いや、なんで理解出来てないの?本当に。


「ねえ、鈴華さんテスト頑張りすぎじゃない?」


「普通よ。」

鈴華さんは、首を傾げていた。


「はぁあ、マジか。負ける気はしてたけど1科目も勝てないなんて。はぁあ」

鈴華さんには、全科目敗北した。そもそも平均点が98点の人に勝てるわけが無かった。


「ふっ、私の完全勝利ね。雀君。順位上がったんでしょ。偉いわ。」

鈴華さんは、小さく笑っていた。…これ、嫌みとかじゃないだよな。


「まあ、初めて、幼馴染にテストで勝ちました。」

僕も結構頑張ったのだ。全体順位が一桁の快挙を成し遂げたのだ。


「そうでしょ。良かったわ。それじゃあ、行きましょうか。」

鈴華さんは、笑顔でそう言っていた。まあ、次テストは頑張ろう。まあ、問題1は解決した。次だ。


「うん、まあ、はぁあ。それともう一つ良いですか?」


「良いわよ。」


「何で今日は図書室にこんな人いるんですか?」

図書室には、いつもでは考えられないほどの数の人がいた。


「気のせいよ。」

鈴華さんは、笑っていた。


「……いや、みんな知り合い」


「気のせいよ。気にしたらダメよ、雀君。」

気にならない方が無理があった。


「逆に聞きますけど、鈴華さん。カメラをこっちに構えている人2人、ゲラゲラ笑っている先輩一人にそれを宥めてる先輩その2に、なんか親のような視線の幼馴染と友人のバカップル。これ気にならない人いますか?」


「私は気にならないわ。」

鈴華さんは、そう言ってジッとこっちを見ていた。


「絶対に呼びましたよね。」


「偶然よ。図書室が賑わってるだけだわ。それに私は言ってないわよ本当に。信じなさい。」

鈴華さんは、そう言って少し膨れていた。本当に言ってないのか。つまり、この話を知っている他の人から……


「……写真部。」


「そうね。それで、雀君、そろそろ良いかしら?」

鈴華さんは、興味がなさそうだった。恥ずかしくないの?ええ、恥ずかしくないわけ?教えて欲しいよ。恥ずかしくないの?


「はぁあ、この前の方がまだ良かった。」

観客が増えるのは聞いてない。


「自業自得よ。雀君。」

鈴華さんは、ニッコリと笑っていた。


「ふう、まあそうですね。言います」


「どうぞ、雀君。」


鈴華さんは、そう言って僕の目の前で立っていた。よし、言うぞ。言うぞ、頑張って勇気を持って。僕は雀、鶏じゃない。

「いつも楽しいです。」

どうも、こんにちわ、鶏です。はぁあ、鶏だった、本当に。


「そうね、私も楽しいわ。それで、雀君」

鈴華さんは、ニッコリと笑っていた。どうやら、チャンスをくれたらしい。


「それで、そのですね。鈴華さん。」

頑張れ、言うだけじゃん、僕。思ってることをいうだけなのにさ、何でさ。


「はい、何?早く言ってよ、雀くん。はぁ、言いなさい。」

鈴華さんは、無表情でジッとこっちを見た。目で圧をかけてきた。可愛いけど、凄い迫力だった。


よし、言うぞ。

「………だ……大好きです。……鈴華さん」

多分、今日は猛暑日だ。ああ、あああああああああ。あああああ。


鈴華さんは、こっちを見て小さく笑うと

「そう、知ってるわ。私もよ。」

そう無表情で言った。何それ、カッコいいな。それと恥ずかしい。


ガヤの声もうるさかった。

「………帰っても良いですか?」


「そう?じゃあ、帰りましょうか雀君?」

鈴華さんは、そう言うと真っ赤な僕の写真を無表情で撮りながらそう答えた。無理無理、恥ずかしいから


「いや、今日は、一人で帰らせて下さい。」


「浮気かしら?雀君」

鈴華さんは笑っていた。


「違いますよ。恥ずかしいので。本当に、もう。」


「知ってるわ。じゃあ、雀君。一緒に帰りましょう。」

鈴華さん…


「話聞いてましたか?」


「聞いてたわよ。帰りましょう。雀くん」

ああ、これは、無理だ、まあ、はぁ。仕方ないな。鈴華さんは食い下がる気配が無かった。


「……本屋にでもよって帰りますか?」


「分かってるわね。雀君」

鈴華さんは、そう言って僕の右手を掴み歩き出した。

一回でも良いから、鈴華さんの照れる顔を見たいと思う人生だった。


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