第57話 名探偵参上
テストの1週間前になって、勉強は進んだが、新聞の犯人は分からず、手紙の犯人は全く分からなかった。少しモヤモヤしている気持ちはあるが、だからといって、分からないのでどうしようもない。そんな中、今日も放課後図書室に向かうために席を立ち上がろうとしたときに呼び止められた。
「二人とも大丈夫?新聞の噂聞きましたよ。」
「……委員長。」
委員長と話すのは久しぶりだった気がする。BSの時代は、結構いろいろなクラスメイトとそれなりに話したりしていたが、ASのこと、アフター鈴華の今は、ほぼ鈴華さんか、バカップルか。先輩か。後はちょいちょい謝りをいれながら何か食べ物を僕らに持ってくる写真部の人としか学校では喋っていない。
「私、愛甲 梨花って名前があるんだけどね。まあいいけど。大丈夫?」
「大丈夫よ。犯人は全く分からないわ。」
鈴華さんは、無表情で答えていた。中学が同じでもこの無表情か。たまに見せる笑顔の優越感が凄かった。自己肯定感が爆上がりである。
「そうなのね。ああ、一応先に、言っておくけど、成志君じゃないわよ。私がちゃんと見張ってるから。」
成志さんは、最近学校に戻ってきた。そして大人しくそれなりにしている。
「知ってるわ。それだけ?それなら私たち行くわよ。」
鈴華さんは、そう言いながら僕の袖を必要に引っ張っていた。
「待って、待って。それでさ、そのさ、私犯人多分、分かった気がするの。多分だけど。」
「「ふぇ」」
変な声で、鈴華さんとハモることがあるとは思ってもいなかった。
「……二人とも息ぴったりだね。」
「てか、何処からその噂を聞いたんですか?委員長。」
そんなこの話広まってるのか?
「えっ、ああ。この前、図書室に」
そう委員長が言いかけたところを鈴華さんは察したのか遮った。僕も察した。
「大丈夫だわ。あの先輩口軽いわね。ね、雀君。」
「本当にね。それで、誰が犯人何ですか?委員長。」
こう言うのは、サッと行って欲しい。推理小説じゃないしね。
「浦崎 蓮さんだと思う。」
……誰だ?六角形先輩にちらっと聞いた六角関係の人々にそんな名前はいなかった気がするし、本当に、誰?
「「うん?」」
鈴華さんも、無表情で首を傾げていた。知らないらしい。ミステリーだったら、いきなり知らない人犯人とかアウトだけど、でも、現実だしな。
「ああ、えっと、もう一人の写真部の女の子だよ。」
知ってはいた。一回見た。
「「何で?」」
声が揃った。
「えっと、まずこの事件を起こせそうなのは、君ら二人と先輩さんと後は、宇都宮さんを含めた6人の幼馴染ぐらい。って二人は思ってるんだろうけどさ。」
名探偵委員長の語りが始まった。
「「はい」」
「君ら二人の写真を撮ったのは、宇都宮さんじゃなくて浦崎さんだよ。それに、あの二人結構仲が良かったから新聞の事知ってても可笑しくないんだよね。」
あっ、そっか。忘れてたけど一緒に走ってたから写真を撮ったのは、そうか。違う人なのか、写真部の宇都宮さんとは。
「でも、友達なら動機が意味不明じゃないかしら」
鈴華さんの疑問には全面的に同意だ。
「それは、不思議だけど。でも消去法的に彼女しかいないでしょ。それに、」
「「それに?」」
「二人最近喧嘩してるらしいから。まあ、そこら辺に理由があるのかもね。」
なるほど、喧嘩の巻き添えか?じゃあ、目的は、宇都宮さんを貶めること?でも、じゃあ、なんで回収した?意味不明だ。まあ、こういう時にどうするかは、少しは分かったと思う。
「……鈴華さん、テスト前に解決しておきますか。」
「そうね、雀君。」
鈴華さんは、そう言って小さくノビをしていた。
「えっ、どうするの二人とも?」
委員長は少し焦っていた。
「「直接確認しに行きます(行くくわ)」」
まあ、結局これが手っ取り早い。
「……でも、2人とも。もしかしたら隠しておきたい気持ちなのかもよ。知られたくない動機があるかもだよ。ここは、まず私が。」
「良いわよ、そんなの。それは、私に関係ないわ。モヤモヤするのは嫌なのよ。」
「まあ、そう言うことです、委員長。それに、知られたくない動機なら実行するなよって話ですし。」
実行してこっちを巻き込んだのなら、動機がどうとか関係ないでしょ。それに犯人じゃ無いかも知れないしね。
「……人の気持ちは複雑なんだと思います。ほら頭でそれが悪だと分かっていても、感情に引きずられるものだと思いますよ。それこそ、成志君だって。だからここは私が間に入って」
委員長は優しいのだろう。でも、僕らはそうでは無い。そんな聖人では無い。回りくどいの嫌だ。さっさとモヤモヤを解決したい。
「でも、巻き込まれるこっちには関係ないわ」
鈴華さんの言葉が全てだった。
「というわけで、行ってきます。委員長」
目的地が図書室から写真部の部室に変更になった。
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